連載 令和30年に思いを馳せて 未来を考える⑥ 音声認識、グラフィック……膨大なデータが作り出す新たな世界

ジョルダンニュース編集部

 企業が顧客からの問い合わせなどに対応するためチャットボットを立ち上げる際には、膨大な顧客とのやりとりをデータベース上に蓄える。意味を解析しようとは考えずに、すべて蓄える。そのデータをもとに、顧客のリクエストと一致するものを見つけ出す。もしそれまでのやりとりの中で一致するものがなかったら、コンピュータはそこでストップ。そのときは、人のオペレータが答える。そうして、やりとりの例がさらに積み上げられていく。

疑問が解決することが多いチャットボット

 AIとはいっても、コンピュータが知性を持ち、人間が考えるようにコンピュータが考えるのではない。1950年代に視覚と脳の機能をモデル化しパターン認識を行うパーセプトロンが、コンピュータのハード性能の急激な進歩、インターネット普及によるデータ収集の容易化、CPUよりも単純な演算の並列処理に優れたGPUの低価格化により、このところ急速に進化した。*1)
 特定のテーマにあったように膨大なデータが蓄積され、解析されていく。囲碁のチャンピオンをコンピュータが破った、とは言っても、人間が囲碁を理解するようにコンピュータが囲碁を理解しているわけではない。膨大な囲碁の棋譜をデータベース上に蓄えていく。それをもとに次の手を出してくるのである。それでも人間は勝てない。
 音声認識とは言っても、あくまでもその延長である。例えば、病院に行ったときのことを考えてみよう。医療の現場で出てくる言葉は症状、検査、薬と限られてくる。それら全ての辞書を持ち、人の話し言葉を翻訳したテキストに含まれているかどうか調べていく。こういったやり方によって音声で入力できる電子カルテシステムが作られていく。これでも忙しい医者には十分役に立つ。もし間違えたところがあれば、そこを修正すれば良い。その修正の過程は全てコンピュータが記憶し、音声認識システムはさらに向上していく。

パソコンやスマホで簡単にキャラクターが


 グラフィックの世界でもコンピュータの性能の向上は著しい。すべてコンピュータで作られた映画がいろいろあるが、今やパソコンでも簡単に3Dでキャラクターが作れる。
 3Dとまでは言えないが、任天堂スウィッチで自分のキャラクターMii(ミー)を作ったことのある人は多いのでは。予め用意された髪型から自分の好みを選び、髪の色を選び・・、そうしてMiiが作られていくのである。そのキャラクターづくりも最新のパソコンのゲームでは、様変わりし始めている。かつては何千万円もするコンピュータと高額なグラフィックソフトがないと作れなかった3Dキャラクターが、それ故、専門学校とかグラフィック専門の会社でしか作れなかった3Dキャラクターが、今は、自分のパソコンやスマートフォンで作れるようになってきている。
 最近、ネスレ香港の作ったネスカフェのコマーシャルに登場する「バーチャルヒューマン」が話題になっている。実在するモデルよりもはるかに個性的な3Dのキャラクターが登場する。現実には存在しないキャラクターである。それでも視聴者の感情移入が始まっている。またあの子に会いたい、というリクエストに応えて、そう遠くない未来に新たなネスカフェのCMが登場してくるものと思える。

自分のように話す音声合成技術も進化


 音声合成の技術もどんどん進んでいる。テキストを読み上げるソフトは、スマートフォン上でもいくつか登場している。いくぶんぎこちなさは残るが、コンピュータはまだ文章の意味がわかるところまでいっていないので、それは致し方ないが、何らかの指示を文に対して与え、よりスムーズな音声ができるようなシステムも登場してきている。

人間の肉声に近づいている音声合成

 自分の声をサンプリングして、自分のように話すこともできる。そういったことは、今はそう難しくはない。テレビで人気のタレントのように話すこともできる。そう言えば、音声の領域では、グラフィックの世界での「バーチャルヒューマン」に相当するバーチャルなものは、既に存在している。一番有名なのは、初音ミク。その他、ヤマハが開発したボーカロイドと呼ばれる実在しないが受ける歌声も登場している。
 この辺の技術をベースに考えれば、新たな旅行代理店のイメージが彷彿としてくる。
*1) ウィキペディア 「ディープラーニング」から

佐藤 俊和(さとう・としかず)
1949年福島県生まれ。 東京大学工学系大学院(修士)修了。79年株式会社ジョルダン情報サービス(現ジョルダン株式会社)設立、代表取締役社長に就任。現在に至る。18年 JMaaS株式会社設立。代表取締役社長。

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記事提供元:タビリス