連載 令和30年に思いを馳せて 未来を考える⑧ GAFAでさえ大きな変化を強いられる時代(上)

ジョルダンニュース編集部

 日本の年号が平成になって、インターネットの出現で世の中が大きく変わり始める。この連載の初回に書いたように、平成元年12月、世界の企業ベスト10に日本の企業が7社名を連ねていたが、平成の終わりには日本企業は一つもない。凋落した日本企業に変わって、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン・ドット・コム)がベスト10入りを果たしているのである。


 40歳以上の人間にとっては、インターネットで世の中がこんなに変わった、と感慨深いが、それより若い世代にとっては、徐々に当たり前となってくる。1990年半ばから2010年代生まれをz世代というが、z世代の人たちはもの心がついた頃からインターネットに接している。インターネットのない世界を考える方が難しい。

常に消え去る危険運命と背中合わせ


 インターネット出現以来の変化は、それまでの時間軸に比べて凄まじく速い。しかしそれは見方を変えれば、今の変化のスピードが当たり前で、それ以前は凄まじく遅い、ということでもある。GAFAですら大きくビジネスモデルを変えなければ、変化の激しい中で消え去る運命なのである。
 GAFAを順にざっと見てみよう。Gはグーグル。2015年8月、大規模な経営組織再編をし、持ち株会社「アルファベット(Alphabet)」を新たに設立し、その傘下にドライバーレスカー事業などのベンチャー事業をぶら下げ、広告事業を軸とするグーグル(ユーチューブを含む)と並列な関係とする。創業者の一人、ラリー・ペイジがCEOとなる。
 本業(検索機能を中心とした広告ビジネス、および検索用の巨大データセンター群を持つことから生み出したクラウドを活用した事業)は、競合各社が独禁法に絡めてクレームを入れてくるため、ここで乱暴に成長を追うことは難しくなってきていた。それ故、果敢に「多角化」を進めていた。コア事業で得た利益や、そこから派生した技術への投資にも果敢に動き、ライフサイエンス、ドローン、ドライバーレス自動車、洋上ビルなどである。*1)
 Aのアップルは、パソコン黎明期に脚光を浴びるが、創業者スティーブ・ジョブズが招いたジョン・スカリーによって、1985年アップル社を追われる。その後、ジョブズはルーカスフィルムのコンピュータ・アニメーション部門を買収して、ピクサー・アニメーション・スタジオを設立した。また、自ら創立したNeXT Computerで、NeXTワークステーション(NeXTcube, NeXTstation)とオペレーティングシステム(OS)NEXTSTEPを開発し、指揮・主導した。
 その後、1996年、業績不振に陥っていたアップルに復帰、1997年に暫定CEOとなり、2000年、正式にCEOに就任。2001年から2003年にかけてMacのOSをNeXTの技術を基盤としたMac OS Xへと切り替える。その後はiPod・iPhone・iPad、Appleの業務範囲を従来のパソコンからデジタル家電とメディア配信事業へと拡大させた。しかし、2003年には膵臓がんと診断され、2011年10月死去する。*2)
 ジョブズの死後、アップルは、M1、M2と独自のチップを開発。Mac、iPhone、iPadと自社の商品に組み込み始める。チップ専業メーカーのインテルやアムダールと比べても遜色ない。また、アップルウオッチで医療界との連携を深めている。
 さらには、EV “Apple car” の完全自動運転システム、“Apple Car”をまず北米地域でデビューさせ、その後徐々に機能の改善や拡張を行っていきながら、完全自動運転に近づけて世界的に売り出すことを計画している。*3)



学生対象事業から世界最大のSNS企業に


 Fのフェイスブックは、2004年にマーク・ザッカーバーグと、ザッカーバーグのハーバード大学のルームメイトで同級生だったエドゥアルド・サベリンが創業した。当初の会員はハーバード大学のドメインのメールアドレスを持つ学生に限定されていたが、ボストン地域の大学、アイビーリーグの大学、スタンフォード大学へと対象を拡大していった。
 当初は学生のみに限定していたが、2006年9月26日以降は一般にも開放された。日本語版は2008年に公開された。公開後、急速にユーザー数を増やし、2010年にサイトのアクセス数がグーグルを抜き、2011年9月、世界中に8億人のユーザーを持つ世界最大のSNSになる。2012年2月1日にフェイスブックは株式を公開する。2012年4月、Instagramを10億ドルで買収する。その後、2012年5月、NASDAQ市場にてIPOが実施される。
 2018年3月に個人情報の流出が報道され、2018年9月、10月にも個人情報が流出。そうした中、2019年6月、仮想通貨「Libra(リブラ)」を2020年から開始するという構想を発表。ニュースは一瞬で世界中を駆け巡ったが、各国政府および銀行からの厳しい反応やパートナー企業の離脱が相次いだ。2020年12月には名称を「Diem」に変えて運営組織を再編するも、2022年1月31日にDiemが所有する資産を売却してプロジェクトを解散することが発表された。
 2021年10月、社名をメタに変更、VRの領域に本気で進出。VRヘッドセットであるOculus Quest向けゲームであるSupernaturalの開発会社であるwithinを買収することを発表した。

*1)東洋経済ONLINE 2015/08/11 本田 雅一
*2)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
*3)HYPERBEAST By HB Team/Jul 25, 2022

佐藤 俊和(さとう・としかず)
1949年福島県生まれ。 東京大学工学系大学院(修士)修了。79年株式会社ジョルダン情報サービス(現ジョルダン株式会社)設立、代表取締役社長に就任。現在に至る。18年 JMaaS株式会社設立。代表取締役社長。

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記事提供元:タビリス