スタートアップW杯東京予選、カウシェが優勝 DeNAと組み「発見型コマース」で世界へ 11月の米決勝戦に進出

ジョルダンニュース編集部

世界130以上の国と地域で予選が繰り広げられる世界最大級のビジネス・ピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ2026」の東京予選が7月17日、グランドハイアット東京(東京・港)で開催された。約250社の応募から厳正な書類審査を通過したファイナリスト10社が、リアルとオンラインを合わせた数千人の観客を前にプレゼンテーションを実施した。審査の結果、ゲーム感覚でお買い物を楽しむショッピングアプリを運営するカウシェ(東京・渋谷、門奈剣平代表取締役CEO)が優勝を果たした。同社は、11月4日から11月6日にかけて米カリフォルニア州サンフランシスコで開催される世界決勝大会に東京代表として出場し、優勝投資賞金100万米ドル(約1億5000万円)を懸けて世界各国の強豪と競い合う。

東京予選突破を喜ぶカウシェの門奈氏(手前右)

■農業課題と消費者を結ぶ「ゲーミフィケーション」

カウシェは「日常に楽しさを」をミッションに掲げ、購買とコミュニケーションが融合した新たな「発見型コマース」を展開している。主力機能である「カウシェファーム」は、アプリ内で作物を育てて収穫すると実際の商品が届く仕組みで、ユーザー同士が商品体験を共有するソーシャル要素も備えている。今回の予選では、このゲーミフィケーションの手法を用いて、農業という世界的な課題を一般消費者の購買行動に繋げたビジネスモデルが高く評価された。審査委員長を務めたアステリアCEOの平野洋一郎氏も「世界的な課題をコンシューマーに繋ぐ点が素晴らしい」と総評で語った。

■DeNAとの資本業務提携、AI活用で非連続な成長へ

カウシェはIPO(新規株式公開)とその先の非連続的な成長を見据え、2026年3月にディー・エヌ・エーからの出資を受け、資本業務提携を締結している。ディー・エヌ・エーはソーシャルゲーム分野で培ったユーザー体験(UX)設計やコミュニティ形成の知見を持ち、株式会社カウシェに対してAI(人工知能)やデータサイエンス領域の技術提供を行っている。この提携により、同月よりディー・エヌ・エー AIイノベーション事業本部 本部長の住吉政一郎氏が、カウシェの社外取締役に就任した。また、社内でも新たにカウシェ取締役CFOとして後藤洋平氏、同執行役員CXOとして佐藤俊輔氏が就任し、強固な経営体制を構築した。

ディー・エヌ・エー社長兼CEOの南場智子氏は「買い物はもっと楽しく、人とつながる熱量を持てる体験にできる。門奈さんたちが信じるその可能性に共感した」とのコメントを寄せている。両社は「ユーザー体験へのこだわり」を注入することで、AIを活用したパーソナライズの高度化を図り、日本発の新しいコマースのスタンダード創出を目指す構えだ。

■「プレゼンはゼロベースで作り直す」門奈社長の覚悟

優勝を受けて、カウシェ社長の門奈剣平氏は、本番に向けて30回もの練習を重ねたことを明かし、かすれた声で喜びを語った。海外展開については、現時点での売上はないとしつつも、アプリが単なる買い物にとどまらず広告やリテールメディアとしての市場性を秘めている点を強調し、「我々の収益性が、海外の皆さんから非常に注目を浴び始めている」と自信を覗かせた。

11月4日からの米サンフランシスコでの世界大会に向けては、「今日本で起きていることが決して日本だけに限らないということを、グローバルの皆さんにも受け取ってもらえるようなメッセージに作り替えていくのは簡単ではない。改めてゼロベースで考え直していきたい」と力強く意気込みを語った。

記者の囲み取材に答えるペガサス・テック・ベンチャーズのウッザマン氏(左)とカウシェの門奈氏

大会を主催するペガサス・テック・ベンチャーズ 創業者兼CEOのアニス・ウッザマン氏は、「スタートアップ、大手企業、投資家を繋ぐグローバルなプラットフォームを作りたいという思いから本大会を立ち上げた。世界で戦えるユニコーン企業を創出することが我々のミッションだ」と述べた上で、カウシェの門奈氏に対し、「スタンフォード大学で教員を務める専門家による厳しいピッチ特訓を提供する」と、シリコンバレーのステージに立つための全面的な支援を約束した。カウシェにはまた、副賞として、日本航空系のZIPAIR Tokyoからサンフランシスコ往復航空券(2名分)が副賞として贈呈された。

日本航空系のZIPAIR Tokyoからサンフランシスコ往復航空券が副賞として贈呈された。

第2位には、Global Mobility Serviceが選ばれた。万が一ローンの返済が滞った場合に備えた車両遠隔制御技術と独自与信モデルを活用し、信用情報を持たない人々へ自動車ローンを提供するモビリティ金融サービスを展開する。第3位には、毒性を持つクロムを使用しない独自の金属表面処理技術を活用し、環境負荷を抑えながら高い耐久性を実現する豊実精工が入賞した。

▪日本予選からは3社が決勝へ

なお、今年の同大会の日本地域予選は、4月23日に名古屋予選が実施された。名古屋代表になったのはリィ(名古屋市、廣瀬あゆみ代表取締役)だ。デジタルコンテンツと運動を掛け合わせ、発達障害のある子どもたちがゲーム感覚で楽しく練習し、運動格差を解消できる支援サービスを提供している。8月26日には九州予選が開催される予定だ。

記事提供元:タビリス