ティアフォーが東証グロース上場、自動運転「オープンソース」で勝負 加藤CEO「米中勢に伍する」
2026/7/27 10:19 ジョルダンニュース編集部

自動運転ソフトウェア開発を手掛ける株式会社ティアフォーが7月22日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した。同日午後に都内で記者会見を開いた加藤真平代表取締役執行役員CEOと阪口聡志取締役CFOは、「自動運転の民主化」をビジョンに掲げ、世界最大規模のオープンソース自動運転OS「Autoware(オートウェア)」を軸とした成長戦略を説明した。加藤CEOは、巨額の先行投資を行う米中企業に対抗するため、オープンソースのエコシステムと日本の自動車産業の量産能力を掛け合わせ、世界市場で勝機を見出す姿勢を強調した。
■「自動運転の民主化」とオープンソース戦略

ティアフォーの最大の特徴は、自動運転ソフトウェアの開発にオープンソースのアプローチを取り入れている点だ。加藤CEOは「コンピューターシステムにおけるLinux、スマートフォンにおけるAndroidのように、オープンソースが産業変革を起こしてきた」と指摘する。同社が開発を主導する「オートウェア」は誰でも無償で利用でき、自動運転に必要な基本機能をすべて網羅している。 特定企業が独占しがちな高度な技術を、誰もが高品質で開発・利用できる「作る側と使う側の民主化」を目指す。加藤CEOは「自動運転にオープンソースを取り入れ、業界のゲームチェンジャーとしてOEM(完成車メーカー)やサプライヤーなどのパートナーと共に成長し、大きな経済圏を創出する」と抱負を語った。
■開発コストと期間を劇的削減、顧客の「ラストワンマイル」を支援
質疑応答で米中企業との投資規模の差を問われると、加藤CEOは自社の優位性を強調した。ゼロから全てを開発し巨額投資を行う米中企業に対し、同社のアプローチは「世界中の技術者が無償で貢献し、すでにロボタクシーが走れる状態にあるオープンソースからスタートできる」点にあるという。 オートウェアの上に、安全性や品質を満たした独自の「ティアフォープラットフォーム」を構築する。巨大なシステムを一つのブラックボックスにするのではなく、機能を組み合わせる「マイクロオートノミーアーキテクチャー」を採用した。従来は顧客がゼロから開発する必要があったが、ティアフォーのひな型をベースにすれば自社固有の「ラストワンマイルの開発」に注力するだけでよいため、低コストかつ短期間で実装が可能になる。結果として得られる安全性や機能性は米中と同水準になると加藤CEOは自信を見せた。
■3つの事業モデルと政府の「1万台」目標が追い風に
事業は顧客ニーズに応じ3つのサービスを展開する。完成系の車両を自社で少量生産しレベル4の社会実装を進める「モビリティサービス」、自動車OEM等とシステムを共同開発する「デベロップメントサービス」、開発ツールを提供する「ソリューションサービス」だ。 前年度の売上高は64億円、2022年から2025年9月までの年平均成長率(CAGR)は75%と高く、今期は売上高84億円を予想する。コアな成長ドライバーと位置付けるデベロップメントサービスでは、初期段階で開発キットを販売し、量産開始後にライセンス料を得るモデルをとる。加藤CEOは「OEMとのプロジェクトが量産フェーズに移行するタイミングで、ライセンス収入による急速な成長を見込む」と述べた。現在、トヨタ自動車、ヤマハ発動機、スズキ、小松製作所といったパートナーと量産化・商用化に取り組む。 当面のターゲットは公共交通、工場内搬送車、建設機械などの特殊車両だ。日本政府の「2030年度までに1万台の自動運転サービス車両を社会実装する」という目標も強い追い風となっており、車両運用台数の大幅な拡大を目指す。中長期的にはロボタクシーや自家用車などへの横展開も視野に入れ、グローバル展開や宇宙・まちづくりといった周辺領域への拡大も計画している。

■E2Eとルールベースのハイブリッド、半導体設計のオープン化も
技術面では、急速に進化するAI技術への対応も進める。最新のE2E(エンドツーエンド)AIの導入について加藤CEOは「ルールベースとE2Eをうまく組み合わせる」と方針を示した。公共交通など複雑なシーンにはE2Eを取り入れて安全性を確保し、単一経路を繰り返す工場内搬送や建設機械には事業性の高いルールベースを適用するなど、用途に応じた最適な技術を提供する構えだ。 さらに、ハードウェアの領域でも競争環境のオープン化を目指し、「車載半導体チップの設計をオープンソース化する計画」も明かした。チップ販売が目的ではなく、設計をオープンにすることでプラットフォームの市場浸透をさらに進める狙いがある。
■上場の狙いと市場の評価への受け止め
調達資金の使途について、加藤CEOは「安全性や品質を網羅したプラットフォームを作り切るための研究開発に当てる」と説明した。今このタイミングで上場を決断した理由は、特定の事業会社に依存せずパブリックな資金調達を行うことで独立した地位を確立し、より多くのパートナー企業との連携を加速させるためだと語った。
■公開価格を下回った上場初日の株価 今後の推移は?
22日の上場初日の取引では、初値(1009円)と終値(896円)がいずれも公開価格(1085円)を下回る結果となった。この株価推移について記者から受け止めを問われた加藤CEOは、「マーケットの評価として真摯に受け止める」と冷静にコメントした。ディープテック企業として事業計画の安定化が難しい側面を認めつつも、「透明性を持って情報開示を続け、事業を成長させることで企業価値を向上させ、株主の期待に応えていく。早期の黒字化達成も一つの大きな焦点になる」と今後の決意を語った。24日終値は前日比138円安の1102円と公開価格1085円をわずかに上回っている。時価総額は700億円。
「既存の強い業界構造を壊すのではなく、オープンソースを通じて新しいAI技術などをOEMが自ら『手の内化』できるよう支援する」と語った加藤CEO。自動運転の黎明期において、日本発のオープンソース技術が日本の量産能力と結びつき、グローバルで存在感を示せるか。上場を果たしたティアフォーの真価が今後問われることになる。









