実業家・堀江貴文氏とJPYC代表・岡部典孝氏が激論 AIによる決済が導く企業DXの未来と日本経済の勝機
2026/8/3 17:03 ジョルダンニュース編集部

人工知能(AI)が自ら思考し、決済までを自動で行う「エージェント経済」の時代が到来しつつある。アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX」で、「AIがお金を使う日 ―エージェント経済で激動する未来を読む」と題したトークセッションで、実業家の堀江貴文氏とJPYC株式会社代表取締役の岡部典孝氏が登壇し、白熱の議論を展開した。AIによる自律決済が企業活動のあり方を根底から覆し、ステーブルコインが次世代の基盤となる可能性が示された。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の観点から、その要旨を紐解く。

実体経済の最前線、旅行業界から始まるAI決済の波
AIエージェントが自律的に決済を行う領域は、具体的にどのような産業から普及していくのか。岡部氏は顧客対応と決済が連動する実需領域での変革が先行すると予測した。岡部氏は、「一般の方の生活に実際に直結するっていう意味だと旅行系は結構早いなと思って」と述べ、インバウンド需要の恩恵を受ける旅行業界からの波及を指摘した。
現に国内大手のアパホテルなどの宿泊施設では、AIエージェントを用いて多様な外国語での予約受付をすでに開始している実態があるという。海外顧客からの支払いが普及の進むドル連動型ステーブルコイン(USDCなど)で行われた場合でも、受け取る日本企業側は裏側で日本円連動型ステーブルコイン(JPYC)に自動変換して処理する仕組みが想定されている。多言語対応スタッフの採用難や為替手数料の負担、複雑な決済フローに悩む中小の宿泊施設などにとって、この仕組みはシームレスで効率的なグローバル対応を可能にし、極めて実用的なDXの第一歩となる。
スマートコントラクトによる業務革新と新たなガバナンス設計
企業がAIエージェントに自社の決済権限を委ねる際のガバナンスやセキュリティ上の懸念についても、深い洞察が示された。堀江氏は、「エージェントに任せる任せない、というのはセキュリティレベルの話なので、決めの問題だけなのかな」と述べ、利用上限額(キャップ)の設定など、社内での権限ルールを厳密に策定すれば十分に対応可能であると説明した。
さらに、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを活用すれば、契約と支払いがプログラムとして同時に自動実行されるため、企業のバックオフィス業務におけるDXが飛躍的に進展する。堀江氏自身も自然言語の指示でプログラミングを行う「バイブコーディング」を駆使しており、かつて3週間を要していたアプリ開発をわずか1日足らずで完了させている実体験を披露し、契約書がそのままコード化される利便性の高さを強調した。一方で、議論の中で、ハッキング等のセキュリティ対策として、ネットワークから物理的に切り離されたハードウェアウォレットを用い、最終的な高額決済の承認は人が物理ボタンを押して行うといった、新時代に対応した「人間とAIの協調型」ガバナンス設計の重要性も指摘された。
税務・会計のDXには「日本円ステーブルコイン」が不可欠に
モデレーターがAI決済における通貨選択の理由を尋ねると、ボラティリティ(価格変動幅)の大きい暗号資産よりも、法定通貨に連動するステーブルコインが圧倒的に優位であるとの見方で両氏は一致した。堀江氏は、現在の日本の税制下において暗号資産の取引には最大55%もの総合課税が適用される点や、他のトークンへの無償配布や交換時にも細かく課税される複雑さを問題視した。
そのうえで堀江氏は、経理処理に耐えうる決済手段の必要性を訴え、「AIエージェントに決済権限を与えて動かすにはステーブルコインがめちゃくちゃ便利」と強調した。岡部氏も企業の経理・財務部門のDXという観点から、「日本の個人が AI エージェントを使うという世界線であれば、日本円のステーブルコインに絶対必要だ。会計とか税務とか色々考えると、日本円で扱うのが 一番いい」と述べている。税務処理の煩雑さを回避し、円滑に企業会計へ導入するためには日本円ステーブルコインが不可欠であり、結果的に企業の税務DXを大きく推進する原動力となる。

米国AI規制を逆手に取る好機と深刻な電力インフラ課題
議論の中盤、米国のAI開発企業が最新上位モデルの利用を米国人に限定する動きについて話題が及ぶと、堀江氏は「アメリカが制限してくるのであれば、逆にそれはビジネスチャンスだと思ってる」と指摘した。堀江氏は自身のロケット開発事業において直面している米国の厳格な武器輸出規制の経験を引き合いに出した。米国の技術が他国から使いづらい状況があるからこそ、米国以外の市場に向けた同等レベルのLLM(大規模言語モデル)の独自開発が、日本の大企業やスタートアップにとって巨大なビジネスとして成立すると説明する。
ただし、日本企業がAIを活用した高度なDXを推進する上での致命的な課題として、電気料金の高騰や原発稼働の遅れなどによる慢性的な電力不足を挙げた。米国の実業家イーロン・マスク氏率いるスペースXが宇宙空間にデータセンターを構築しようとしている動きなどを紹介しつつ、AI社会を根底で支える電力インフラの整備が急務であると警鐘を鳴らした。
紙幣廃止の提言と決済金融業界におけるパラダイムシフト
社会全体のDXを推進する上で、いまだ根強い現金決済の習慣が企業の業務効率化を阻む大きな障壁となっている。堀江氏はこの課題に対し、「とにかく紙幣をなくしましょうよ。1万円札や5000円札をなくすと高額の資金の移動は難しい」と大胆な紙幣廃止論を展開した。現状の高額紙幣の存在意義については、「もう本当裏金、脱税ですよ」と一刀両断し、資金の流れを完全にトラッキングできるステーブルコインの普及は、アンチマネーロンダリングの観点からも規制当局にとって利点が多いと語った。
既存の金融機関やクレジットカード会社もただ座視しているわけではない。岡部氏の分析によれば、これまで非効率だった決済業務を根本から解消する切り札として、国内外の大手金融機関がステーブルコインの導入や特許取得に本格的に動いているという。自らのビジネスモデルを変革させてでも新時代に適応しようとする決済業界のDXが、水面下で急ピッチに進んでいる実態が明かされた。
取引の99%をAIが担う時代と、日本の規制緩和による覇権奪還
将来的な金融・決済の展望について、岡部氏はわずかな価格差を狙う裁定取引(アービトラージ)などを超高速かつ自動で行うAIボットが台頭すると予測した。その結果、「24時間365日ちょっとでも価格がずれて落ちてたら拾うというAIが取引をする」と語り、ステーブルコインの決済量において、「99%ぐらいが、いわゆる人間以外なんじゃないかと」という衝撃的な見立てを示した。

堀江氏もこの意見に同調し、すでに株式やFX、競馬の直前予想にまでAIが買いを入れてオッズを変動させる事態が起きており、取引ボリュームの大半をAIが占める現状を紹介した。こうしたAI主導の経済圏において、AIやWeb3の業界は、「既得権益者がいないから楽なんですよ」と述べ、「今のうちにするっとやった方がいい。そこで規制がある程度緩和されて、ステーブルコインって使いやすいね、なんて話になると大きく変わってくんじゃないかな」と語り、機動的な法整備による日本のグローバル金融における覇権奪還に強い期待を寄せた。タクシー業界におけるライドシェア規制のような強固な既得権益のしがらみが少ないという。
企業が踏み出すべき「第一歩」、ステーブルコインの財務諸表計上
議論の終盤、AI時代に向けていかに企業が自社のDXを進めるべきか、具体的なアクションが提示された。堀江氏は、国民の多くがプログラミングなどを十分に使いこなせないITリテラシーの深刻な低さに着目した。「結局AI使って何かやりたいけどやり方がわからないという人たちに、人材を派遣して教えてあげるような仕事はこれから拡大すると思いますね」と述べ、他社のDXを牽引するAI導入支援やシステム請負が、IT企業にとって巨大なビジネスチャンスになると予測した。
一方、岡部氏は非ITを含むすべての企業経営層に向け、「まず企業においては、ステーブルコインを保有して財務諸表に掲載してください。そこが第1歩です」と実践的なアドバイスを提言した。大掛かりなシステム導入の計画を待つのではなく、わずかな額でも実際にステーブルコインを購入することこそが、自律型AI経済に対応する真のDXへの確かな第一歩となると締めくくった。









