ZEALS、上半身人型でロボ再参入 価格半減 日本の狭さに対応
2026/8/27 14:19 ジョルダンニュース編集部

対話型人工知能(AI)開発のスタートアップ、株式会社ZEALS(本社・東京都目黒区、代表取締役CEO・清水正大氏)は8月5日、日本の狭隘な屋内環境に最適化した「準国産」コンパクトヒューマノイドロボット「D1」を発表し、ロボット事業への再参入を果たした。本体価格を一般的な人型ロボットの半額に相当する500万円(別途、OSおよび保守費用として月額20万円が必要)に抑え、2026年度内に100台の量産と累計1万時間の現場稼働を目指す。医療、保険、リース、導入支援の各業界大手と強固なアライアンスを構築し、深刻な労働力不足に直面する病院や介護施設、物流拠点などの屋内現場において、フィジカルAI(物理世界で動くAI)の主導権を確保する狙いだ。

■「世界一の現場」を抱える日本、フィジカルAIの主戦場へ
「世界で一番の現場は、日本にある」――。発表会の壇上で、ZEALS代表の清水正大氏は力強く語った。
清水氏はこの半年間、1カ月のうち約10日を米国、10日を中国、10日を日本という過酷なスケジュールで世界中を巡り、最先端のフィジカルAIやヒューマノイドの開発現場を自らの目で視察してきた。そこで目にしたのは、AIモデルやソフトウェアの領域で巨額の資金と優秀な研究者を集めて先行する米国と、圧倒的な部品エコシステムと圧倒的な量産スピードを武器にハードウェアで先行する中国という、二大巨頭の凄みだった。
しかし、その両大国を視察した上で清水氏が確信したのは、ヒューマノイドの実用化において最も重要となる「現場」が日本にこそ存在するということだった。
現在、世界的に「フィジカルAI」や「ロボット基盤モデル」の開発が急ピッチで進められている。インターネット上のテキストデータを大量に収集して急速な進化を遂げた大規模言語モデル(LLM)とは異なり、物理世界を動かすAIの進化には、実際の現場でロボットが稼働した「一次データ(リアルデータ)」が不可欠となる。具体的には、映像や音声のみならず、接触時の「力加減(トルク)」「減速のタイミング」「物体を渡す際の角度や軌跡」といった、インターネット上には決して存在しない現場データである。
日本は、世界最速で高齢化が進む医療・介護現場、世界最高水準の品質と緻密さを要求する製造・物流現場、きめ細かなサービスを求めるホテルやホスピタリティ現場など、極めて高い業務基準と深刻な人手不足が同居する「課題先進国」だ。
清水氏は「いかに米国や中国が技術で先行していようとも、ロボットが実際に稼働して労働力を補うべき真の現場は日本にある。そして、その狭く複雑な日本の屋内空間で取得されるデータこそが、世界のどこでも通用するフィジカルAIの『燃料』になる。日本は世界一の現場を持つ、ユースケース先進国になれる」と指摘する。

■あえて二足歩行を排除、安全性とデータ収集力を両立する「台車型」
ZEALSが発表した「D1」の最大の特徴は、その極めて現実的な設計判断にある。同社は人型ロボットでありながら、あえて「二足歩行」を捨て、安定した台車型の走行ベースの上に双腕アームと頭部を搭載した「セミヒューマノイド」を採用した。
この設計判断には、安全性とデータ収集効率における、極めて論理的な意図がある。
第一に、人と同じ空間で働く上での「安全性」である。病院や介護施設、工場など、多様な人々が行き交う既存の空間でロボットを稼働させる場合、ロボットが「転倒する」ことは絶対に許されない。2足歩行ロボットは物理的に不安定であり、万が一転倒して第三者に衝突すれば深刻な人身事故を招きかねない。ZEALSは、筑波大学附属病院で行った病院内実証実験などを通じ、人と同じ空間で働くには「絶対に転倒しない台車型」が不可欠であると結論付けた。
第二に「データ収集の効率化」である。二足歩行の複雑なバランス制御に高価な計算資源や莫大な開発リソースを割くのを止め、走行ベースによる移動は安定した既存技術(車輪型)に任せる。その一方で、物をつかむ、運ぶ、受け渡すといった「手の動き(マニピュレーション)」にすべての開発・計算リソースを集中させる。これにより、基盤モデルが最も必要とする「接触の力、角度、軌跡」のデータを、安全に、長く、連続して収集することが可能となり、1日に蓄積できる学習データ量が二足歩行機と比較して桁違いに多くなる。
■「準国産」というスピード重視の冷徹なコスト戦略
開発および製造戦略においても、ZEALSは「純国産」にはこだわらず、世界の優れた部品を調達して日本国内で組み立てる「準国産」という独自のアプローチを選択した。
「純国産にこだわれば、開発に数年を要し、価格も1000万円以上に高騰してしまう。それでは今まさに人手不足で悲鳴を上げている日本の現場にロボットを届けるのが遅れ、世界から取り残されてしまう」(清水氏)。同社は世界の主要な部品サプライヤーと直接関係を築き、商社を何段も経由しない独自の調達構造を、毎月現地を訪れることで泥臭く構築した。これにより、2026年4月の開発着手からわずか4ヶ月という驚異的なスピードで機体を完成させ、1体500万円という現実的な導入価格を両立させたのである。
ハードウェアとしてのD1は、全高約129.3cm(最大159.3cmまで可動可能)で、日本の既存の屋内空間に最適化されたコンパクト設計である。特に走行ベース幅は48cmに抑えられており、車椅子と同等かそれ以下の幅であるため、病院の狭い廊下やエレベーターにもそのまま対応する。
■10年越しの原点回帰、ハード・OS・基盤モデルの「垂直統合」
ZEALSは一見、突如としてロボット産業に現れた新参者に見えるが、その原点は10年前の2015年に遡る。清水氏が学生時代に創業した同社は、もともとロボット向けのソフトウェア研究開発からスタートした歴史を持つ。しかし当時は市場の立ち上がりが早く、一度は会話チャットボットや音声AIなどの「対話型AI」領域へと事業をシフト。約10年間にわたりAI接客やAIアバターの技術を磨き上げ、同領域で業界トップクラスの地位を築いてきた。今回のD1開発は、まさに10年越しの「原点回帰」である。
この10年で培った会話AIの技術は、D1に搭載されたヒューマノイド向け統合オペレーティングシステム「Omakase OS」の中核レイヤーとして息づいている。
同社は、ハードウェアとしての「D1」機体だけでなく、制御や対話を司る「Omakase OS」、そして現場データに基づいて自律的に学習を進める知能基盤モデル「Omakase Zen(ゼン)」の3つのレイヤーすべてを自社で開発する「垂直統合」体制を敷く。
D1が現場で稼働し、アームに搭載された全軸トルクセンサーやLiDAR、カメラ、超音波センサー(ガラスなどの透明物を認識可能)などを通じて映像・力覚・音声などのログデータが収集される。そのデータが「Omakase Zen」へと送られて再学習され、アップデートされた知能が再びOTA(無線通信)を通じて全機体へと配信される。この循環(データフライホイール)を繰り返すことで、D1は現場で稼働すればするほど、より賢く、より多様な手作業(タスク)をこなせるようになる。
いかに優れたロボットであっても、現場に納品されるだけでは「労働力を補った」とは言えない。ZEALSは、販売台数を競う旧来の売り切り型モデルを否定し、顧客の現場で実際に業務を担った時間を「現場稼働時間」と定義し、累計10,000時間の達成を社会実装の最重要指標(KPI)に掲げている。この実用化の壁を崩すため、同社は医療、保険、リース、デプロイ(導入)という4つの領域で強力な企業アライアンスを構築した。

■「準国産」から「純国産」の未来へ、日の丸ロボット産業のDay One
政府もフィジカルAIの推進を重要テーマとして掲げる中、ZEALSはすでに自民党のロボット議員連盟(山田太郎事務局長)や、加藤勝信元財務相らとも面会・視察を通じた連携を進めている。国家的な労働力不足への解決策として、政官財を巻き込んだ実装が加速しつつある。
清水氏は、「D1の『準』という文字には、世界の優れた技術を取り入れて今すぐ現場を救うための『準備』、そこで日本のサプライヤーや製造事業者と連携してステップアップし、世界に誇る『純国産』のヒューマノイドロボット産業を自ら育て上げるという決意が込められている」と熱く語る。
2026年10月には、初回ロットの納品が開始される予定だ。試作や展示デモで終わらせず、100台の量産と10,000時間稼働という明確な実稼働コミットメントを背負い、ZEALSと強力なパートナー連合は今、日本の、そして世界の労働市場を変革する歴史的な一歩を踏み出そうとしている。
(ジョルダンニュース編集部)









