台湾政府、スタートアップで日本との協業推進。東京拠点を移転拡張
2026/8/30 23:30 ジョルダンニュース編集部
台湾政府が推進する強力なスタートアップ支援策を起爆剤に、日台のテクノロジー企業による国境を越えたオープンイノベーションが新たな局面を迎えている。2026年8月、東京都内で「日台イノベーションサミット2026」が開かれ、続いて港区に台湾側の対外支援拠点「東京基地(Tokyo Hub)」が拡張オープンした。地政学リスクの高まりに伴いサプライチェーンの再構築が急務となるなか、日台双方は半導体や人工知能(AI)、バイオなどの先端分野で「競争」を避け、技術力と事業展開力を高次元で融合させる「相互補完」のパートナーシップを加速させる方針だ。

■ 台湾が描く国家戦略「五大信頼産業」と「AI新世代建設」
マクロ経済の動向を見れば、台湾の存在感は際立っている。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表した2026年「世界競争力ランキング」において、台湾は歴代最高となる総合4位に躍進した。人口2000万人以上の経済体の中では連続で世界首位を維持し、スタートアップエコシステムの国際的な評価も急上昇している。台湾政府はこの経済的強靭性を土台に、「AI新世代建設」や「五大信頼産業」などの国家プロジェクトに注力している。
18日、サミットの開会挨拶に登壇した台湾 国家発展委員会の葉俊顯主任委員(閣僚級)は、日台間の連携について次のように表明した。「東京拠点の協働を通じてすでに20社以上の台湾スタートアップが日本に根付き、東京都などの支援も広がっている。新東京基地をテコに、日米台の三方連携による技術検証とグローバル展開を一段と深めていきたい。」

続いて基調講演に立った台湾 国家発展委員会産業発展処の蕭振榮(HSIAO, CHEN-JUNG)処長は、国家戦略の核心について次のように言及した。「賴清徳総統が主導する五大信頼産業(半導体、AI、軍工産業、ドローン、次世代通信)の目的は、台湾を民主主義テクノロジー陣営において不可欠で信頼されるパートナーに仕立て上げることにある」。さらに蕭処長は、ドローン輸出が前年比21倍に急増し、今後3年で10倍に増産する計画を披露したうえで、「台湾と日本の政策重点はAIや半導体などで高度に合致しているが、両国が競争関係に陥ることは決してない。台湾の製造力・量産技術と、日本の先端材料・装置開発力が組み合わさることで、真の相互補完が成立する」と力説した。
台湾の国家発展委員会(NDC)が全面的に支援する国家主導プロジェクト「Startup Island TAIWAN」のCOO兼マネージングディレクターを務めるAllen John Ku氏は、サミット2日目の基調発言において、日台両国の参加者に直接挙手を促す演出を交えながら、次のように語った。
「会場を見渡してほしい。本日ここに集まり、手を挙げてくださった日本の皆さんこそが、台湾スタートアップにとって不可欠な『パートナー』そのものだ。台湾チームが海を越えて日本へやって来て、事業を共創できる相手と出会うこと。それこそが、日本側が最も強く期待している姿でもある」

Ku氏は、東京にとどまらない日本全国への連携拡大についても具体例を挙げて言及した。
「東京都とは2024年のMOU(覚書)締結以来、緊密な協力を続けているが、今週は大阪にも足を運び、阪急阪神不動産(阪急阪神ホールディングス傘下)との間でも新たな連携協定を結んだ。台湾の先進テクノロジーを、首都圏のみならず関西をはじめとする日本各地の産業界へ届けていく」
「本日集まった企業は、日本で何を実現できるかを直接示す覚悟を持っている。単発の視察に終わらせず、長期的な信頼関係を築いてほしい。われわれのスローガンである『Together, Go Big(共に、大きく羽ばたこう)』の精神のもと、日台が手を携えてグローバル市場へと飛躍していきたい」
こうした台湾側の熱量に呼応して、自治体間の連携を推進する東京都の小池百合子知事も歓迎の意を表した。「2024年に東京都と台湾が締結した協定に基づき、SusHi Tech Tokyoなどで着実に連携を積み重ねてきた。有楽町のスタートアップ支援拠点『Tokyo Innovation Base(TIB)』などを活用し、日本と台湾のプレイヤーを強く結びつけ、人々の暮らしに直結するイノベーションを生み出していきたい」

日本貿易振興機構(JETRO)理事の高島大浩氏は、長年の現場観察を交えて次のように証言した。「10年前に台湾スタートアップへ関心のある海外展開先を尋ねると、1位は米国、2位は中国大陸、3位にようやく日本が入る程度だった。しかし現在、同じ質問をすると間違いなく米国と日本が最優先に挙がる。価値観を共有する同志国を中心にサプライチェーンを築く地政学的変化のなか、日台が強みを持ち寄る重要性はかつてないほど高まっている。」
■ 赤字でも早期上場、資本市場「TIB」が拓く資金調達路
日台のイノベーション促進をファイナンス面から強力に下支えするのが、台湾独自の資本市場や日台共同ファンドである。
19日に登壇した台湾証券取引所(TWSE)の副総経理(副社長)、高培景(Kao, Pei-Jing)氏は、2021年に創設された新興企業向け市場「台湾イノベーションボード(TIB)」の強みを説いた。一般市場が一定の操業年数と黒字化(収益性)を上場条件として課すのに対し、TIBはわずか2年の設立期間と約3300万ドル(約50億円)の時価総額があれば、収益性が赤字の段階でも上場申請できる画期的な要件緩和を実施している。Kao氏は、「台湾は人口2300万人の島でありながら上場企業の時価総額は世界トップクラスであり、TIBを通じた早期IPOによって、海外展開を狙う小規模な外資系企業も高い市場評価(バリュエーション)と潤沢な流動性を享受できる」とアピールした。

あわせて、台湾ベンチャーキャピタル協会および台湾プライベート・エクイティ協会の事務局長を務める蘇拾忠氏は、台湾の上場企業がVCファンドやスタートアップへの投資をESG評価の重要項目として義務づけられるなど、民間の成長資金が活発に動いている実態を紹介した。蘇氏は、「通常、上場までに平均15年かかるのに対し、VCファンドのライフサイクルは10年であるため初期投資を躊躇する構造的課題があったが、TIBはその期間を大幅に短縮する有効な解になる」と述べ、AIスタートアップを対象とする成長支援策「TiBOOST」への参画を日本勢に呼びかけた。TiBOOSTは台湾の金融監督管理委員会と国家発展委員会が2026年8月に共同で開始した、国内外の有望なAIスタートアップを対象とする成長支援・誘致プログラムだ。
(ジョルダンニュース編集部)









