札幌市長に公開質問状を提出──在宅就労「5割ルール」、なぜ5割なのか

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公文書公開(一部)の結果を踏まえ、就労継続支援B型「ジャパニケア札幌」が10月30日に提出。条約・国の通知と札幌市の取扱いを5つの観点で並べた対照表もあわせて公開

合同会社JAPANICARE(本店:北海道江別市、代表社員:緒方修)が運営する就労継続支援B型事業所「ジャパニケア札幌」(札幌市中央区)は、2026年10月30日、札幌市が同年10月1日から始めた在宅就労支援の日数の上限(当法人の呼称「在宅就労5割ルール」)について、公文書公開請求の一部の結果を踏まえ、札幌市長あてに公開質問状(質問17問・別紙8問)を提出しました。あわせて、条約・法律・国の通知・市長答弁と札幌市の取扱いを5つの観点で並べた対照表(A4・両面1枚)を参考資料として公開します。公開質問状の写しは、令和9年度報酬改定の検討の参考として、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課にも、国の制度設計に関する意見書とともに送付します。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/191550/2/191550-2-00d0e0f00943a80fdad216b3ea65bac5-1200x630.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]10月1日からスタートした在宅就労トリプル50%( 利用者割合・各日の定員比率・ 支給量比率を5割以下に)
問うのは、在宅就労そのものの是非ではありません。
「なぜ5割なのか」
札幌市がこの数値を設定した根拠と、利用者一人ひとりの状況や意思決定を尊重する支援との整合性について、札幌市に説明を求めるものです。
札幌市が導入した3つの「5割」
札幌市は、2026年3月26日付けの通知(札障第4862号)により、就労移行支援・就労継続支援A型・B型の在宅就労支援について、10月1日から次の取扱いを始めました。
- 利用契約者数に対する在宅就労支援の利用者数を、5割以下とする
- 各日の利用定員に対する在宅就労支援の利用者数を、5割以下とする
- 利用者ごとに、各月の在宅就労支援の日数を、支給量(決定日数)の5割以下とする

いずれも「原則として」とされ、対象要件1.(重度の障がい等により通所が難しい場合)に当たる方だけが除かれます。当事業所が問題にしてきたのは、このうち3つ目、利用者一人ひとりの在宅の日数に一律の上限がかかることです。
これまでに確認できていること
当事業所は、7月から9月にかけて札幌市に文書でくり返し質問し、江別市・厚生労働省・全国社会就労センター協議会(全国セルプ協)にも照会して、やり取りを原文のままnoteで公開してきました。確認できているのは、次の点です。
- 国の事務連絡(2026年4月13日)は在宅支援に必要な支援内容を定めているが、在宅の日数や割合の上限は示していない
- 政令市20市と東京都の公表資料を調べた範囲(2026年8月時点)では、利用者ごとの在宅の日数に一律の数値上限を設けているのは札幌市だけでした。その後、千葉市が2026年8月10日付けの通知で、10月1日から「週2回を限度」とする取扱いを始めています(2026年10月時点で札幌市と千葉市の2市)
- 2026年10月14日の札幌市議会(第二部決算特別委員会)で、札幌市は「5割」の根拠を、手帳を持っていない方や軽度の方の利用が多かったことと、国が原則対面の考え方を示したことなどを踏まえたものと説明した。他の割合ではなく5割とした理由は語られていない(インターネット中継の録画による要旨)
- 札幌市は、「5割」の設定に当たり参照した文書に「実績記録票のデータも該当します」と説明している(2026年9月9日)。参照した時期や、他の割合ではなく5割とした理由は、公開されている審議会資料・議事録・市議会会議録の範囲では見当たらない
- 江別市は「基本的に札幌市の取扱いに準じて設定」と回答(2026年8月27日)
- 厚生労働省は2026年9月14日付けの部長通知で「意思決定支援ガイドライン」第2版を示し、「意思決定の主体」はあくまでも本人であることを理念・信条に掲げた
- 国は2026年9月28日、令和9年度報酬改定に向けた論点(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第64回)で、在宅支援の対象者を「通所が困難な者(重度者・地理的要因(離島・豪雪地帯等))」などの類型ごとに確認し、定員に対する在宅利用者の割合に上限を置く方向を示した。利用者ごとの利用日数を一律の割合で区切る設計は、この論点からは読み取れない。札幌市は、豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪地帯(北海道は全域)
- 札幌市が運営する事業所検索サイト「元気さーち」のB型698件に、国のガイドラインが「記載していないか確認すること」を指定権者に求めている表示(通所日数に応じた手当等51件、昼食等の一律無償提供66件、金品の提供2件・2026年9月18日時点・当法人調べ)があった。当法人は同日、市が確認しているかを照会した(10月29日現在、回答なし)。10月15日の再確認でも、掲載697件のうち118件が残り、同種の表示が4件加わっていた
- 当法人は2026年9月24日、札幌市議会に陳情書を提出した(9月25日受理)。9月30日には、主治医の意見がある利用者について、5割を超える部分の個別の判断を札幌市に申し出た(回答期限10月14日)。期限までに回答はなかった(10月13日に市から「14日までの返答は困難」との連絡)

「一定の上限」と「5割」は同じなのか
札幌市は当事業所への回答(2026年8月28日)で、国が関係者から意見を聴取している例として、全国セルプ協が「在宅利用者数・利用日数をいずれも5割以内に制限するなど全国的な運用方法を確立するよう国に要望」していることを挙げました。
そこで当事業所は、全国セルプ協に直接、要望の趣旨と「5割」の根拠を確認しました。2026年9月18日の回答の要点は、次のとおりです。
- 要望は、在宅就労支援そのものを否定するものではない。障害特性、疾病、通所困難等により在宅での支援を必要とする方がいることが前提
- 主として要望してきたのは、「事業所における在宅利用者数について一定の上限を設けること」
- 「在宅利用者数・利用日数をいずれも5割以内」という記載は、主張の本旨ではなく、先行自治体の方法を引用した例示
- 「5割」という数値は、福祉的・学術的な研究や統計的検証によって導き出したものではない。現場の実践や、上限を設けている自治体の取組を踏まえた具体案として示したもの
- 「障害特性、疾病、通所困難性等、在宅利用の必要性を個別に確認する」ことも併せて求めている

これは、札幌市の5割に根拠がないことを意味するものではありません。ただ、「一定の上限が必要」という考え方から、なぜ「5割」という数字になるのかは、別に説明が要るのではないか。当事業所は、そう考えています。
求めているのは「5割の撤廃」ではありません
当事業所は、在宅就労を無制限に認めるべきだとは考えていません。在宅就労支援の適正化と不正防止という札幌市の目的には賛成です。在宅で働く利用者にも対面の支援や状態の確認が要ること、事業所側に相応の体制が要ることも理解しています。当事業所の在宅就労は、本人の意向と主治医の意見を踏まえ、個別支援計画に基づいて行っています。
だからこそ、問いたいのです。
個別のアセスメントで「この人には在宅で働くことが必要だ」と判断された場合に、その判断を一律の「5割」が上回ることには、どのような合理性があるのでしょうか。
利用者本人に「あなたには在宅が適していると判断しても、制度上は5割までです」と説明することが、本人の意思決定を支える支援としてどう位置づけられるのか。本件については、利用者本人からも、この取扱いについて確認してほしいとの求めを受けております。
当事業所が求めているのは、根拠と例外の基準が示されるまでの間、利用者ごとの日数の上限の適用を止め、個別の判断に委ねることです。当事業所は8月に市へ自ら運営指導(実地確認)を依頼し、9月には日数の上限に代わる手段(運営指導の委託体制とデータによる事前確認の組み合わせ)を提案しています。市長答弁にある独自のガイドラインの整備にも、事業者として関与する用意があります。
公開質問状の主な内容(5つの観点)
公開質問状は、8月31日に行った公文書公開請求(「5割」の設定に当たり作成・収集・参照した文書など)のうち、10月14日に公開が決まった部分の写しを10月26日に受け取り、確認したうえで提出したものです。公開が決まったのは、2026年3月25日決裁の「指定就労継続支援事業所等における在宅利用時の支援に関する適正化について」、同年3月2日の障がい者施策推進審議会の説明資料と議事録、国の文書3件(留意事項通知、Q&A、新規指定等のガイドライン)で、いずれも全部公開です。「5割」の設定に当たり作成・参照した文書(実績記録票のデータの分析を含む)、庁内の検討記録、部会への意見依頼、国とのやり取りは、今回の決定に文書名が挙がっておらず、残りの文書は2027年1月19日までに決定されることになっています。10月26日に受け取った3月25日の決裁文書(36ページ)には、他の割合ではなく「5割」とした理由の記載も、実績記録票のデータの分析も、対象とした3か月の記載もありませんでした。綴じられていたのは、通知案・同意書・様式・ホームページ掲載案と、廃止された旧通知です。また、9月15日の追加請求(国の会議資料への掲載の経緯等)は、10月29日に「相当の部分」の公開決定の連絡があり、11月9日に写しを受け取る予定です。
質問は、次の5つの観点で構成しています。
- 数値の根拠──なぜ5割なのか。参照した実績記録票のデータはいつの3か月分で、どう分析したのか。国が示した令和9年度改定の論点(対象者ごとの確認と定員に対する割合)と、利用者ごとの日数の上限との関係をどう考えるか
- 個別性・合理的配慮──個別の評価で5割超が適切となった場合、なぜ一律の上限が優先されるのか。例外の基準と手続はあるのか。障害の状態に応じて行う合理的配慮(障害者差別解消法第7条第2項)と、一律の上限はどう両立するのか
- 意思決定支援──本人の選択肢を行政が先に狭めることを、国の意思決定支援ガイドライン第2版との関係でどう整理したのか
- 札幌固有の事情──札幌市が豪雪地帯であること、冬期の通所の困難さなどを、5割という数値の設定と例外の範囲にどう反映したのか
- 目的と手段──不正防止が目的なら、運営指導や、市が運営する事業所検索サイトの広告表示の確認といった手段を先に検討したのか

私たちが求めているのは「説明」です
私たちは、札幌市と対立したいわけではありません。利用者に制度を説明する立場として、「なぜ5割なのか」を、利用者にもわかる言葉で説明できるようにしてほしい。それだけです。
公開された文書で5割の根拠が確認できたなら、私たちはその根拠を理解したうえで支援に反映します。確認してもなお疑問が残るなら、その疑問を札幌市に伝え、より適切な在宅就労支援のあり方について議論を続けます。
「5割だからダメ」でも、「在宅なら無制限」でもありません。
利用者本人に必要な支援を考え、選択肢をわかりやすく説明し、本人の意思を確認する。そのプロセスの中で、札幌市の「5割」という数字がどんな意味を持つのか。私たちは、その説明を求めています。
経緯(主なもの)
- 2026年3月26日 札幌市が通知(札障第4862号)
- 7月15日 札幌市への質問を開始(以後、文書でくり返し質問)
- 8月24日 運営指導(実地確認)を自ら依頼
- 8月27日 江別市が回答(札幌市の取扱いに準拠)
- 8月31日 札幌市へ公文書公開請求(9月15日に追加請求。同日、厚生労働省へ行政文書開示請求)
- 9月18日 全国セルプ協が回答。同日、市が運営する事業所検索サイトの掲載内容について札幌市へ照会
- 9月20日 日数の上限に代わる手段を札幌市へ提案
- 9月24日 札幌市議会へ陳情書を提出(9月25日受理)
- 9月28日 国が令和9年度報酬改定に向けた在宅支援の論点を提示
- 9月30日 主治医の意見がある利用者について、5割を超える部分の個別の判断を札幌市へ申出(回答期限10月14日)
- 10月1日 札幌市の新しい取扱いが開始
- 10月14日 8月31日の公文書公開請求について、一部の公開を決定(3月25日の決裁文書、3月2日の審議会の説明資料・議事録、国の文書3件。いずれも全部公開)。残りは2027年1月19日までに決定。9月15日の追加請求は10月29日・11月9日が決定の期限
- 10月26日 公開が決まった文書の写しを市役所で受け取り
- 10月30日 公開質問状を特定記録郵便で提出
- 11月2日 本リリース配信

今後
- 公開質問状の写しと意見書を厚生労働省障害福祉課に送付します。国は2026年9月28日の報酬改定検討チームで在宅支援の見直しの論点を示しており、利用者ごとの日数に一律の上限を置くかどうかは、国の設計の問題でもあります
- 回答期限は11月16日(公開質問状に記載)。回答が届き次第、全文をnoteで公開します。回答がなかった場合も、その事実を公開します
- 公開された行政文書は、報道関係者からの求めに応じ、提供できる範囲で整理して提供します
- 利用者への取材は、ご本人の意向を確認のうえ、事業所が判断します

添付・参考資料
- 公開質問状(全文)
- 別表:示されている考え方と札幌市の取扱いとの対照(A4・両面1枚。数値の根拠・個別性・意思決定支援・札幌固有の事情・目的と手段の5つの観点)
- これまでの経緯のまとめ(札幌市・江別市・厚生労働省への照会のすべて):https://note.com/jcare_sapporo/n/ne154399781bf
- 札幌市の通知(札障第4862号):札幌市ホームページに掲載

公開質問状(全文・PDF・18ページ)別表:示されている考え方と札幌市の取扱いとの対照(PDF・A4横2ページ)合同会社JAPANICAREについて
北海道で就労継続支援B型事業所2か所(えべつ工房春香=江別市、ジャパニケア札幌=札幌市中央区)を運営しています。ジャパニケア札幌は、カフェを併設した雑貨店「MANOMEWO(マノメオ)」の店内にあり、店での飲食の提供、着物のリメイク・アップサイクルを含むものづくり、ZINEやKindleの企画制作などの仕事を通じて、利用者一人ひとりの「働きたい」を支えています。
お問い合わせ先
合同会社JAPANICARE 就労継続支援B型事業所 ジャパニケア札幌
管理者 緒方 修

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記事提供元:タビリス