「給付付き税額控除」導入へ東京財団が具体的制度設計を提言
2026/4/10 19:56 PR TIMES

公益財団法人東京財団(東京都港区、理事長:中林美恵子)は、4月10日(金)に、政策提言「『給付付き税額控除』の導入に向けた具体的な制度設計」をホームページにて公表しました。
就職氷河期世代の非正規雇用者など、雇用保険(第1のセーフティネット)と生活保護(第3のセーフティネット)の間に位置する「第2のセーフティネット」の不在により、既存の制度からこぼれ落ちる中低所得勤労者への支援が長年の課題となっています。本提言はこの構造的空白を直視し、就労支援と所得再分配の両立を図る「給付付き税額控除」を日本に即した形で実現するための、2段階の具体的制度設計を示すものです。
米国では低所得の勤労者への就労支援を税額控除と還付(給付)の組み合わせで行っており、就労インセンティブの向上と格差是正の両面で実績を上げています。本提言はこの欧米の知見を踏まえつつ、日本の制度環境に適合した設計として以下6つの提言を行います。
「給付付き税額控除」の導入に向けた具体的な制度設計
【提言1】 勤労者個人を対象とした支援
【提言2】 年収の壁を作らないよう給付を段階的に減額
【提言3】 公金受取口座を通じた給付で実施
【提言4】 自治体の所得情報とガバメント・データ・ハブ(仮称)の活用
【提言5】 給付は国の事務
【提言6】 財源は所得税制の見直しと社会保障制度改革
当財団では、人口減少下における持続可能な社会システムへの転換を研究テーマの一つに掲げ、税・社会保障制度改革に関する研究を進めています。本提言は、森信茂樹(シニア政策オフィサー/取りまとめ責任者)、佐藤主光(上席フェロー/一橋大学経済学研究科、国際・公共政策大学院教授)、土居丈朗(上席フェロー/慶應義塾大学経済学部教授)、そして小黒一正(上席フェロー/法政大学経済学部教授)の四者が共同で取り組んだ成果です。
東京財団ではこれまで長年にわたり、給付付き税額控除の研究に取り組んでまいりました。詳細は「給付付き税額控除特集ページ」をご参照ください。
提言要旨
■背景社会保障国民会議で「給付付き税額控除」の導入議論が始まった。欧米諸国で広く導入されているこの制度は、所得に応じたきめ細かな税額控除と給付(還付)により所得再分配を行うとともに、中低所得者の勤労インセンティブを高める効果を持ち、格差是正と就労促進の両面で実績を上げている。
■問題意識
わが国では、雇用保険(第1のセーフティネット)と生活保護(第3のセーフティネット)の間に位置する「第2のセーフティネット」が不在のまま、就職氷河期世代の非正規雇用者など制度からこぼれ落ちる中低所得勤労者への支援が手薄な状態が続いている。給付付き税額控除はこの構造的空白を埋める経済支援であると同時に、就労を促進し人手不足を解消する成長戦略でもある。実効性の高い政策として早期導入が求められる。
■6つの提言
提言1:勤労者個人を対象とした支援
まずは社会保険(厚生年金等)に加入する勤労者個人を対象とし、就労促進の観点から個人単位とする。同一世帯の他の構成員の所得は支給要件に反映させない。年金受給者・パート労働の第三被保険者・学生アルバイト等は対象外とする。個人事業者については確定申告に基づき実施する。
提言2:年収の壁を作らないよう給付を段階的に減額
年収300万円程度までを対象とし、基準超過後は段階的に減額することで「年収の壁」を排除する。所得情報の精度が確保されるまでの当面は定額部分+減額部分で構成し、精度向上後は米国EITCのような逓増方式への移行も視野に入れる。130万円の壁への対応としても活用できる。
提言3:公金受取口座を通じた給付で実施
手法は原則「給付」とする。中低所得の勤労者への支援なので、税額控除と給付の2つが考えられるが、「公金受取口座」を活用して給付に一本化することが効率的である。
提言4:自治体の所得情報とガバメント・データ・ハブ(仮称)の活用
当面は市町村保有の「合計所得金額」を活用してデータベースを構築し、速やかな実施を優先する。3年後以降はガバメント・データ・ハブ(仮称)で企業からの直接・毎月の情報連携(英国型)に移行する。個人事業主・フリーランスはマイナポータルとe-Taxを活用した申告を進めていく。
提言5:給付は国の事務
給付付き税額控除は国の制度であるため、国が責任主体として所得情報把握・給付額決定・振込を一元管理する。申請不要の「プッシュ型」を理想とし、システム整備が間に合わない場合はオンライン申請から開始する。地方自治体の活用や支援も視野に入れる。
提言6:財源は所得税制の見直しと社会保障制度改革
1年後に既存の税制・社会保険制度との調整を要さない形で先行導入・3年後に本格実施する。令和7・8年度税制改正における基礎控除の上乗せ特例の見直し・人的控除の税額控除化・給与所得控除縮減、社会保障制度の見直し等で財源を捻出する。低所得勤労者の負担が増えないよう給付額を調整することを原則とする。
■実施ロードマップ
1年後(先行導入)
市町村保有の所得情報と公金受取口座を活用して給付付き税額控除を先行導入する
3年後(本格実施)
ガバメント・データ・ハブ(仮称)で企業から直接・毎月の所得情報連携を行い(英国型)、本格稼働する
政策提言の詳細はこちら
提言者プロフィール (敬称略)
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/56667/68/56667-68-4e7ace7fa30cc29379c7cab338485cfe-303x303.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]公益財団法人東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹(もりのぶ・しげき)法学博士。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省。主税局総務課長。大阪大学法学研究科教授、東京税関長、2005年財務省財務総合政策研究所長。この間、東京大学、政策研究大学院大学、プリンストン大学などで教鞭をとり、コロンビア・ロースクール客員研究員。2006年に退官し中央大学法科大学院教授を経て現職。2007年より東京財団にて税と社会保障の一体改革について幅広く研究・提言をおこなっている。2010年―2012年政府税制調査会特別委員。現在、デジタル庁や内閣府の有識者会議の構成員を務める。[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/56667/68/56667-68-4c5b93901b3e03784ff2971e3493b3bb-303x303.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]公益財団法人東京財団 上席フェロー 佐藤 主光(さとう・もとひろ)1969年秋田県生まれ、92年一橋大学経済学部卒、98年カナダ・クイーンズ大学において博士号(経済学)を取得、99年一橋大学に着任、現在に至る。専門は財政学・税制、地方財政、社会保障。主な著書に「地方交付税の経済学(共著)」(日経・経済図書文化賞受賞)、「地方税改革の経済学」(エコノミスト賞受賞)。「日本の財政」(石橋湛山賞受賞)政府税制調査会、財務省財政制度等審議会、内閣府規制改革推進会議などを歴任。2019年度日本経済学会石川賞受賞。2024年春の紫綬褒章授章、学術研究と政策の融合に努めてきた。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/56667/68/56667-68-1d3d6a438e1ffc059763d532134cb546-303x303.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]公益財団法人東京財団 上席フェロー 土居 丈朗(どい・たけろう)1970年生。1993年大阪大学経済学部卒業、1999年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員、慶應義塾大学准教授などを経て2009年4月から同大学経済学部教授。行政改革推進会議委員、税制調査会特別委員、全世代型社会保障構築会議構成員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、産業構造審議会臨時委員、東京都税制調査会委員、大阪府特別顧問、大阪市特別顧問も兼務。著書『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞を受賞)、『入門財政学』(日本評論社)。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/56667/68/56667-68-dabc142ab5e89d048fb59543a96a6e9e-303x303.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]公益財団法人東京財団 上席フェロー 小黒 一正(おぐろ・かずまさ)1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から法政大学経済学部教授に就任 。専門は公共経済学。
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◇◆東京財団 (英語名称 The Tokyo Foundation)について◆◇東京財団は、1997年に設立された民間・非営利・独立の政策シンクタンクです。長期的な視野に立ち、自由な発想でさまざまな問題について、調査、研究、政策提言を行うとともに、広い視野をもって社会に貢献する人材の育成を図ることで、日本ならびに世界の発展に寄与することを目的として活動しています。
政策研究事業では、社会課題を科学的に分析し、解決策を示し、その実現に向けた道筋を描くべく、政策立案者や企業、市民社会などと連携し、具体的な社会的変革を起こすことを目指しています。そのためにも、データに基づいた分析と、戦略的な政策対話を組み合わせ、日本社会の持続的発展のための知的基盤を築いてまいります。
また、人材育成事業では、世界44カ国に広がる奨学金プログラム、日本語教育支援、日本理解を深める書籍寄贈を通じ、国際的な視野を持つリーダーを育成しています。
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/56667/68/56667-68-c7561ca141842d017f8425c6079a7612-1918x2700.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
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記事提供元:タビリス









