中国税関のデュアルユース処分670件を分析――レアアース139件、日本向け20件を確認

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「禁輸」だけでは捉えられない中国の輸出管理――司法記録・政府調達も横断し、地方税関の執行実態を検証

合同会社WTS研究所(京都市伏見区)は、中国のデュアルユース(軍民両用、以下DU)輸出管理について、中国税関が公表した行政処分670件をケースレベルで分析したResearch Note 「中国のデュアルユース輸出管理は、何を目指しているのか――670件の税関行政処分、司法記録、検査能力から読む中国の執行システム」 を公開します。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/133294/3/133294-3-04a40852be4757e7ebbfb333c7aa382a-1536x1024.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]イメージ画像:WTS Institute作成
本調査では、670件のうちDU管理違反が処分の中心または実質的根拠となる503件を中核案件として分析しました。この503件では、レアアース関連139件が単独の品目カテゴリーとして最大でした。別途、仕向国を原資料で確認できた282件では、仕向国として日本を確認した案件が20件ありました。
さらに、行政処分だけでなく、司法記録、税関・技術センターによる検査装置等の政府調達情報も横断して分析しました。その結果、中国のDU輸出管理は、政策文書や「特定国への禁輸」という視点だけでは捉えきれず、地方税関による検査、技術判定、不予処罰、行政処分、刑事司法などを含む多層的な執行システムが形成されていることを示す結果となりました。

Research Note全文は、WTS研究所ウェブサイトで無料公開します。
[Research Noteを読む → https://www.wtsinst.com/ja/insights/china-dual-use-export-controls-2026/


なぜ「制度」ではなく「実際の執行」を調べたのか
中国によるレアアース輸出管理や対日輸出管理への関心が高まるなか、ニュースでは中央政府が発表する規制措置や外交上の意図に注目が集まりやすくなっています。
しかし、制度が企業活動へ実際に影響するのは、個々の貨物について税関が何を確認し、どのような案件を違反と認定し、どのような行政判断を行うかという執行段階です。
今回確認した地方税関の処分記録では、米国や日本だけでなく、台湾、タイ、ベトナム、韓国、インドなど幅広い仕向国への貨物が処分対象となっていました。仕向国を原資料で確認できた282件では、台湾30件、米国26件、日本20件、タイ18件、ベトナム18件、韓国・インド各16件でした。
ただし、この件数をそのまま国別の「摘発率」や「執行の強さ」とみなすことはできません。各国向けの輸出量や申告件数という分母が異なるためです。
「中国のデュアルユース輸出管理を、特定国への一律の禁輸としてだけ捉えると、地方税関の日常執行の実態を見誤る可能性があります。」
WTS研究所では、中央政府による政策措置と、地方税関による日常的な執行を分けて見る必要があると考えています。
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本調査から見えた3つのポイント

1.輸出管理は、制度文書だけでなく地方税関の日常執行として動いている
670件を年別にみると、2023年18件、2024年46件、2025年316件、2026年は7月31日までに290件が確認されました。
重要なのは、件数の増加そのものではありません。DU該当性の確認が、地方税関の日常的な審査、検査、鑑定、処分の中で繰り返し確認されている点です。
なお、違反の発生・申告から正式な処分決定まで長い時間差が生じる案件も確認されており、年別・月別件数をそのまま同時期の違反発生件数として読むことはできません。

2.規制該当性は、商品名やHSコードだけでは決まらない
実際の行政処分では、純度、濃度、密度、強度、材質、性能、用途などの技術仕様が規制該当性を左右しています。
税関は、成分分析、試験成績書、製品仕様書、SDS、現物検査や技術鑑定などを通じて、申告された品名だけでなく貨物の実体を確認しています。
「輸出管理の実効性を見るには、法令だけでなく、税関が貨物の成分・材質・性能をどこまで確認できるかを見る必要があります。」
これは日本企業にとっても実務上重要な点です。
中国の輸出管理リスクは、新たな規制が発表された時だけ生じるものではありません。地方税関の日常的な検査や技術鑑定の中で、一般的な品名で申告された貨物でも、実際の成分、材質、性能によって規制該当性が問題となる可能性があります。
企業には、HSコードや品名の確認だけでなく、SDS、成分表、試験成績書、製品仕様書などの技術情報を輸出管理判断へ接続する体制が求められます。

3.不予処罰、行政処分、刑事司法、検査能力を通じて、多層的な執行システムが形成されている
DU管理違反が確認されても、すべての案件が同じように処理されるわけではありません。670件のうち、正式な不予行政処罰は88件確認されました。
公開記録では、貨物規模、軽微性、是正状況、偽装の有無、反復性など、処分判断に関連する複数の事情が確認されます。
また、WTS研究所は、税関・技術センター等による調達関連文書73件を収集し、重複する公告等を整理した69件の独立プロジェクトを分析しました。分析装置、検査設備、外部鑑定など、法令を実際の貨物へ適用するための測定・鑑定能力の整備も確認されています。
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レアアース139件、日本向け20件
DU管理違反の内容を明確に確認できる中核503件では、レアアース関連139件が最大の案件群となりました。
続いて、レアメタル66件、黒鉛加工品45件、化学製剤・試薬37件が確認されており、執行対象は、レアアースや黒鉛などの戦略材料だけでなく、化学品、機械部品、製造設備など幅広い品目群に及んでいます。
一方、仕向国を原資料で確認できた282件では、仕向国として日本を確認した案件が20件ありました。
なお、日本向け20件は、DU中核案件503件を母集団とした数字ではなく、仕向国を原資料で確認できた282件を母集団とする別集計です。
今回のデータだけから、日本向け貨物が他国より選択的に厳しく執行されていると判断することはできません。国別の政策措置と地方税関の日常執行は、区別して分析する必要があります。
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調査方法について
本調査では、公表資料を単純集計するのではなく、個別案件ごとに原資料を確認し、重複排除、正規化、分類、証拠品質の評価を行っています。
また、公表案件数をそのまま執行率とはみなさず、確認できない情報を「存在しない」として処理しないことを研究基準としています。
670件のうち649件は原資料を直接確認し、21件は中国税関の公式検索結果等から内容を復元しました。税関・技術センター等による調達関連文書73件についても、同一プロジェクトの再公告等を統合し、69件の独立プロジェクトとして分析しています。

詳しい調査方法:
[WTS研究所 Methodology → https://www.wtsinst.com/ja/methodology/

Related Research|関連する専門調査
無料Research Noteで明らかになったテーマのうち、日本向け貨物とレアアースについては、ケースレベルの専門調査を別途提供します。

 『中国のデュアルユース輸出管理|日本向け版 2026
  ~~ 20件の行政処分、企業属性、原資料から検証する日本向け貨物の執行実態 ~~』
 :仕向国として日本を確認できた20件について、税関、品目、処分結果、適用法令、企業属性、 原資料などをケースレベルで検証しています。
 [詳細はこちら → https://www.wtsinst.com/ja/reports/japan-bound-2026/

 『中国のデュアルユース輸出管理|レアアース版 2026
  ~~139件の行政処分から読み解く許可違反、処分差、検査能力と仕向国 ~~』
 :レアアース関連139件について、許可違反、処分結果、貨物規模、税関差、仕向国、検査能力などを分析しています。
 [詳細はこちら→ https://www.wtsinst.com/ja/reports/rare-earths-2026/

WTS研究所について
WTS研究所は、貿易管理の執行、経済安全保障、戦略物資、企業・サプライチェーンを対象とする独立系リサーチ機関です。
2020年に東アジアの企業・貿易情報の調査から活動を開始し、貿易統計をはじめとするクロスボーダーデータの分析を基盤に、現在は貿易管理の執行や経済安全保障、戦略物資、サプライチェーンへと研究領域を発展させています。
税関行政処分、司法記録、政府調達、企業情報などの公開資料をケースレベルで収集・構造化し、政策が実際の執行と企業活動へどのように転換されるかを分析しています。今後は、貿易統計・関税データ等との接続を進め、政策・執行・企業・実際の貿易フローを横断する分析基盤を拡充します。

 組織名:合同会社WTS研究所
 所在地:京都府京都市伏見区深草フチ町14-67
 サイト:https://www.wtsinst.com/ja/

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記事提供元:タビリス