分析に供された検体の入手経路について、大阪市保健所長に「質問書」を提出しました(令和8年8月18日付・回答期限8月25日)― 「未知のピーク」は、なぜ約2週間で「プベルル酸」になったのか

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本質問書は、令和8年8月14日付「質問書」及び8月16日付「確認書」とは別個の書面であり、「プベルル酸」の試験に供された検体を、大阪市及び国がどのような経路で入手したのかについて、回答を求めるものです

■ 令和8年8月18日、大阪市保健所長に「質問書」を提出しました
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町、代表取締役 森 雅昭)は、令和8年8月18日付で大阪市保健所長に対し、「質問書(試験に供された検体の入手経路について)」を提出しました。書面(紙媒体)による回答を求め、回答期限は令和8年8月25日を目途としています。

本質問書は、大阪市及び厚生労働省が発した次の各文書の記載を突き合わせた結果についてのみ、確認を求めるものです。

1 大大保第8562号(令和8年2月18日)

食品衛生法第28条に基づく「生紅麹」の回収を行わなかった理由を問うたのに対し、紅麹原料については令和6年3月末時点で同法第6条第2号に該当するか明らかでなかったことから、同法第59条第1項に基づく回収等の命令(行政処分)は行わなかった旨が回答されています。同法第28条に基づく収去を実施した旨の回答はなされていません。

2 大大保第8639号(令和8年3月30日)

記3において、大阪市は、小林製薬株式会社から収去した物品又は任意で提供された物品を検体として試験に供したとし、いずれの検体についても同社が販売先等から自主的に回収した物品が含まれていると考えられる、と回答しています。

記1において、厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所が公表した各資料に記載されている試験の検体について、大阪市は「関与しておりません」と回答し、記2において、同省又は同研究所への検体送付の有無についても記1の回答のとおりとされています。

3 厚生労働省 発健生0422第3号(令和8年4月22日)

当社の令和8年2月22日付請求(開第3092号)は、2024年に紅麹関連試験及びプベルル酸試験に使用された検体につき、入手日時、提供者、入手方法(収去、回収、任意提出等)、受領記録、決裁文書及び入手経緯が記載された文書一式を対象とするものでした。

これに対し、毒性試験報告書及び研究報告書等5件が開示された一方、「受領記録」及び「決裁文書」については、事務処理上作成又は取得した事実はなく、実際に保有していないとして、情報公開法第9条第2項により不開示とされています。

当社が確認を求めている点

当社は、上記各文書によれば、大阪市及び国は、いずれも入手経路を公文書上たどることのできない検体を用いて試験を行い、その結果をもって当該物質を「プベルル酸」として公表したこととなる、と理解しています。本質問書では、この理解に誤りがあるかを問い、誤りがあるとお考えの場合には、当該検体が、いつ、誰から、いかなる方法により入手されたものかを示す公文書を特定して示されるよう求めています。

同定の当否を第三者が検証するためには、「どのような分析を行ったか」だけでなく、「何を分析したか」、すなわち検体の入手経路と同一性が示される必要があります。

添付書類は、大大保第8562号、同第8639号、発健生0422第3号、及び令和8年2月22日付行政文書開示請求書(開第3092号)の各写しです。
■ 本質問書に至った背景
大阪市保健所は、小林製薬紅麹問題において「プベルル酸」を前提とした行政対応を行っています。しかし、当社が令和8年7月に大阪市保健所から開示を受けた行政文書(大大保第8202号・第8220号ほか)と、小林製薬が公表した事実検証委員会の調査報告書を分析科学の基本に照らして検証すると、その判断過程について、当社は確認を求める必要があると考えています。

当社が確認を求めている点は、検出された時点では名前のなかった「未知のピーク」が、約2週間後には「プベルル酸」とされていることです。

問題は「2週間では絶対に同定できない」ということではありません。

既知化合物であり、真正な標準品が容易に入手でき、適切な分析方法が確立されていれば、現代の分析機器を用いて短期間で同一性を確認できる場合があります。

だからこそ、その約2週間で、実際に何を行い、何を根拠として「プベルル酸」と同定したのかが問われることになります。
微生物から一つの物質を取り出し、化学的に同定すること
紅麹や青カビなどの微生物は、多数の代謝物を産生します。

その複雑な混合物の中から目的物質を見つけ、「この物質はプベルル酸である」と化学的に同定することは、HPLCで一つのピークを発見することとは異なります。

一般的には、検体 → 抽出・分離 → 必要に応じた精製 → 機器分析 → 標準品・スペクトル等との比較 → 同定、という科学的検証が必要になります。

重要なのは、「ピークを発見すること」と「そのピークの物質を同定すること」は同じではない、ということです。
ペニシリン──発見から構造決定まで17年、全合成まで29年
世界的に有名な青カビ由来物質がペニシリンです。

フレミングが青カビ(Penicillium notatum)による抗菌作用を発見したのは1928年です。

しかし、その化学構造が確定したのは、ドロシー・ホジキンによるX線結晶構造解析が行われた1945年でした。発見から17年です。

さらに、その構造をもとにシーハンが全合成を達成したのは1957年で、発見から29年が経っていました。

この間、フローリーとチェインによる分離・精製、アブラハムによる構造の推定など、多くの研究者が段階を踏んで検証を積み上げています。

「青カビが何らかの物質をつくっている」と発見することと、「その物質が何であるか」を化学的に明らかにすることは、別の問題なのです。
コンパクチン(スタチンの原点)──探索開始から構造報告まで5年
世界中で使用されるスタチンの原点となったコンパクチンも、遠藤章博士らが青カビから発見した物質です。

遠藤博士がコレステロール合成阻害物質の探索を開始したのは1971年です。約2年をかけて6,000株を超える微生物の培養抽出物をスクリーニングし、1973年7月に Penicillium citrinum の培養物からML-236B(後のコンパクチン/メバスタチン)を見いだしました。

その化学構造が学術論文として報告されたのは1976年です。探索の開始から数えて約5年、目的物質を見いだしてからでも約3年を要しています。

多数の微生物をスクリーニングし、目的とする作用を持つ物質を探し、複雑な培養物から目的物質を分離・精製し、その化学的性質・構造を明らかにしていく──この手順が省かれることはありませんでした。
プベルル酸そのもの──報告から構造決定まで18年
プベルル酸そのものは、1932年にバーキンショーとレイストリックによって Penicillium puberulum などの代謝産物として報告されました。

しかし、その化学構造は長く決まりませんでした。ベンゼン環を前提とする当時の理論では説明がつかず、1945年にデュワーが七員環の芳香族系(トロポロン)という新しい概念を提唱して、ようやく道が開けます。

プベルル酸の構造が論文として確定したのは1950年、コーベット・ジョンソン・トッドらによるものでした。最初の報告から18年が経っています。

もちろん、1930年代と2024年では分析機器の性能は比較になりません。現在ではHPLC、LC-MS、HRMS、NMRなど高度な分析手段があります。

だから、既知物質で標準品等が揃っていれば、昔とは比較にならないほど短期間で同定・確認できる可能性があります。しかし、それならなおさら、「どの分析手段を使い、何と比較し、どのデータによってプベルル酸と判断したのか」が重要になります。
3月15日「未知のピーク」→約2週間後「プベルル酸」
この点について、小林製薬が2024年7月23日に公表した事実検証委員会の調査報告書には、次の経過が記載されています。

・2024年3月15日、同社が製品ロット及び原料ロットのHPLC分析を行った結果、意図しない成分が含まれている可能性を示す未知のピーク(同報告書では「ピークX」と呼称)が検出された。

・その2日後の3月17日の時点においても、成分名は特定できていない旨が社内で共有されていた。

・3月22日に製品の自主回収が公表され、同日、消費者庁の指示を受けて大阪市保健所東部生活衛生監視事務所に健康被害の報告が行われた。

ところが、それから間もなく、「プベルル酸」という具体的な化合物名が登場します。未知のピークが検出された3月15日から数えても、約2週間です。

ここで当社が問題としているのは、期間の短さそのものではありません。「未知のピーク」から「プベルル酸」へ至った約2週間を科学的に説明する分析記録はどこにあるのか、という点です。

さらに、小林製薬側の資料には「紅麹からのプベルル酸の精製方法が確立していない」旨が記載されています。それならば、どのような方法によって目的物質を分析し、どのようなデータによって「プベルル酸」と判断したのでしょうか。
「HPLCのピーク」だけで、どこまで同定したのか
HPLCは極めて有用な分析手法です。しかし、未知ピークについて、保持時間やピークの一致・近似だけから、その化学構造まで一義的に確定できるとは限りません。

だからこそ、当社は行政に対し、次の各点の確認を求めています。

・使用した検体は何か

・どのような抽出・分離を行ったのか

・どの標準品を使用したのか

・HPLC以外にどのような分析を行ったのか

・質量分析等ではどのようなデータが得られたのか

・類似化合物や異性体についてどのような検討を行ったのか

・誰が、どの分析結果を根拠として「プベルル酸」と判断したのか

これらは、「プベルル酸と同定した」という結論を第三者が科学的に検証するための基本的な情報です。

ところが、当社が情報公開請求によって確認してきた行政文書からは、「未知のピーク」から「プベルル酸」という結論に至った過程を第三者が検証できる一連の分析・判断記録を確認できていません。
令和8年7月、大阪市保健所の開示文書が示していたこと
当社は令和8年7月、大阪市保健所に対する情報公開請求により、次の決定を受けました。

・大大保第8202号(令和8年7月22日)──「プベルル酸」に関して大阪市が保有する文書として開示されたのは5点です。このうち4点は、原因企業とされる小林製薬から提出された資料であり、残る1点が大阪市自身の検査成績書でした。

・大大保第8220号(令和8年7月24日)──令和6年3月27日前後のプベルル酸に関する資料について、「プベルル酸」と判断した者、その判断の根拠、及び厚生労働省との協議・連絡の記録は、いずれも「不存在」との決定でした。

また、令和8年7月24日の電話において、大阪市保健所の担当者から、小林製薬提供資料のほかに資料はない旨の説明を受けています。

こうした経過を踏まえ、当社は、分析の内容に先立つ問題として、そもそも試験に供された検体がどのような経路で入手されたのかを確認するため、令和8年8月18日付の質問書を提出しました。
■ 本リリースについて
・本リリースにいう「不存在」とは、行政文書の保有の有無についての行政機関の回答であり、科学的知見一般の存否についての判断ではありません。

・大大保第8562号は、食品衛生法第59条第1項に基づく命令に関する回答であり、同法第28条に基づく収去の実施の有無そのものについての回答ではありません。本リリースは、同号に同条に基づく収去を実施した旨の回答がなされていない、という事実を述べるものです。

・本リリースにおける当社の理解及び評価は、当社が情報公開請求により入手した行政文書に基づく当社の受け止めであり、特定の個人・法人について因果関係や違法性を判断するものではありません。

・ペニシリン、コンパクチン及びプベルル酸の研究史に関する記述は、「ピークの発見」と「化学的同定」が別の作業であることを説明するための一般的な例示であり、本件と同一視する趣旨ではありません。年数は、いずれも最初の発見・報告から化学構造が確定した時点までを数えたものです。

・大大保第8220号の「不存在」は、当該請求の対象範囲(令和6年3月27日前後のプベルル酸に関する資料に係る協議・連絡等の記録)についての回答です。なお、令和6年3月26日付「健生食監発0326第6号」のとおり、国と自治体との間の連絡の経路自体は存在しており、本リリースは「一切連絡がなかった」と述べるものではありません。

・事実検証委員会の調査報告書に関する記述は、小林製薬が2024年7月23日に公表した同報告書の記載に基づく当社の要約であり、同報告書は同社の社内対応の検証を目的とするものです。同報告書はプベルル酸の同定過程を検証したものではありません。

・本リリースに記載した日付及び文書番号は、当社が開示を受けた行政文書の記載に基づきます。
■ 主な参考文献
・ペニシリン:Fleming, A. (1929) Br. J. Exp. Pathol. 10, 226-236/Crowfoot(Hodgkin)らによるX線結晶構造解析(1945年)/Sheehan, J. C.(1957年、全合成)

・コンパクチン:Endo, A., Kuroda, M., Tsujita, Y. (1976) J. Antibiot. 29, 1346-1348/Brown, A. G. et al. (1976) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1165-1170(結晶構造)

・プベルル酸:Birkinshaw, J. H. & Raistrick, H. (1932) Biochem. J. 26, 441-453(最初の報告)/Dewar, M. J. S. (1945) Nature(トロポロンの提唱)/Corbett, R. E., Johnson, A. W., Todd, A. R. (1950) J. Chem. Soc. 6-9(構造)

・小林製薬株式会社「事実検証委員会の調査報告を踏まえた取締役会の総括について」及び同社事実検証委員会「調査報告書」(いずれも2024年7月)
■ 会社概要
会社名:株式会社薫製倶楽部

代表者:代表取締役 森 雅昭(薬剤師)

所在地:〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1

事業内容:薫製食品の製造・販売

ブランド:倉敷ソーセージ

TEL:086-483-0602

E-mail:sales@kunsei.co.jp

紅麹関連情報:https://kunsei.com/archives/category/benikoji
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記事提供元:タビリス