10倍堪能!海外旅行の超スキル⑪ 同じ旅先に何回も 小柳淳
2022/11/28 8:44 ジョルダンニュース編集部
コロナ禍も3年近くが経ち、欧米豪そして日本は比較的自由に往来ができるようになってきた。旅好きはそろそろ旅をしたくてウズウズしているだろう。再開後最初はどこに行こう。行ったことがないのはどこか、と考え始めるかもしれない。でも、ここで待ってほしい。訪れたことがあるところでもいいではないか。
パリでも、台北でも、ボストンでも、初めてのときはいわゆる名所を巡るだろう。旅の時間は限られている。少しムキになって、ガイドブックやWEBサイトで知った場所を次々と巡る。うーん、非日常の旅がどこか日常の忙しさに似てくる。ちょっと残念。それに、パリに一度数日間行ったとして、どれだけこの都市を知ったというのか。シャンゼリゼ、ルーブル、エッフェル塔、モンマルトルなど有名な場所は見たかもしれない。でも、どの街にも歴史の深みを湛えた素敵なエリアはいくらでもある。
同じ土地への旅が2度目、3度目だとリラックスできる。もう、見どころは一通り見ている。穏やかな表情を見せるマレを散策し、サン・ジェルマン・デ・プレで書店や文具店に入り、いくつもある、2つの建物間にガラス屋根を掛けたアーケード状のパッサージュを通り抜ける。パリらしくないパリ、デファンスの高層ビル街に足を運んでもいい。こうして、有名観光地を短時間で駆けぬける欲張った旅から離れられるのだ。食事だって有名レストランを素通りし、歩きながら目にしたカフェやビストロに入るのもいい。
もちろんこれはパリに限ったことではない。少し贅沢だけれど、2回目、3回目はゆったりとした心で旅先に向き合える。
とはいえ、知らない街を歩いてみたいというのは、歌に歌われたように素直な欲望だ。だから、初めてのところへの旅もある。その場合はぜひ同じ街に連泊をすることをお勧めする。同じところに何度も旅するように、同じ街に長く滞在すると名所を回る呪縛から逃れられる。かつて高度成長のころは、6日程度のツアーで、ロンドン、パリ、ローマ3都市周遊という英仏伊を駆け抜けるようなものがかなりあったし、今でも皆無ではない。これでは「行った」という記録以上のことはないだろう。
旅はガイドブックなどに載っている見どころを回ってしまった後が、断然楽しくなるのだ。ホテルでゆっくり朝食をして、気ままに街を歩く。マドリードなら、プラド美術館で時間を気にせず、半日、1日いてもいい。そうしてステレオタイプなイメージから離れた、街の普段着の表情にほんの少し触れることができる。あの超高層ビル林立の香港だって、ビルの谷間には小さな屋台のような食べ物屋があり、銀行街から少し歩くと海産物乾物屋が軒を連ねる西營盤に至る。都心をちょっと離れるだけで、下町深水埗にはビーズやボタン、レースなど服飾品店が集まり、バス40分程度の新界まで足を伸ばせばマングローブ樹が水際に育つ亜熱帯の海が眼前に現れる。
こうして同じところに行ったり、連泊したりすると、少しずつ旅先の素顔に近づける。そして、繰り返し訪れる土地に敬意と愛着が生まれることもある。地場の映画や演劇、コンサートにはまったり、現地の言葉を習いたくなる人もいる。多少でもローカルの言葉が話せると旅の過ごし方がもっと自由にもっと楽しくもなる。スペイン語、広東語、タイ語などなど。旅ではスタンプラリーのように訪問した土地の数を誇ることはない。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏3県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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初めての土地、非日常の旅が日常の忙しさに
パリでも、台北でも、ボストンでも、初めてのときはいわゆる名所を巡るだろう。旅の時間は限られている。少しムキになって、ガイドブックやWEBサイトで知った場所を次々と巡る。うーん、非日常の旅がどこか日常の忙しさに似てくる。ちょっと残念。それに、パリに一度数日間行ったとして、どれだけこの都市を知ったというのか。シャンゼリゼ、ルーブル、エッフェル塔、モンマルトルなど有名な場所は見たかもしれない。でも、どの街にも歴史の深みを湛えた素敵なエリアはいくらでもある。
同じ土地への旅が2度目、3度目だとリラックスできる。もう、見どころは一通り見ている。穏やかな表情を見せるマレを散策し、サン・ジェルマン・デ・プレで書店や文具店に入り、いくつもある、2つの建物間にガラス屋根を掛けたアーケード状のパッサージュを通り抜ける。パリらしくないパリ、デファンスの高層ビル街に足を運んでもいい。こうして、有名観光地を短時間で駆けぬける欲張った旅から離れられるのだ。食事だって有名レストランを素通りし、歩きながら目にしたカフェやビストロに入るのもいい。
もちろんこれはパリに限ったことではない。少し贅沢だけれど、2回目、3回目はゆったりとした心で旅先に向き合える。
街の普段着の表情に触れる連泊の勧め
とはいえ、知らない街を歩いてみたいというのは、歌に歌われたように素直な欲望だ。だから、初めてのところへの旅もある。その場合はぜひ同じ街に連泊をすることをお勧めする。同じところに何度も旅するように、同じ街に長く滞在すると名所を回る呪縛から逃れられる。かつて高度成長のころは、6日程度のツアーで、ロンドン、パリ、ローマ3都市周遊という英仏伊を駆け抜けるようなものがかなりあったし、今でも皆無ではない。これでは「行った」という記録以上のことはないだろう。
旅はガイドブックなどに載っている見どころを回ってしまった後が、断然楽しくなるのだ。ホテルでゆっくり朝食をして、気ままに街を歩く。マドリードなら、プラド美術館で時間を気にせず、半日、1日いてもいい。そうしてステレオタイプなイメージから離れた、街の普段着の表情にほんの少し触れることができる。あの超高層ビル林立の香港だって、ビルの谷間には小さな屋台のような食べ物屋があり、銀行街から少し歩くと海産物乾物屋が軒を連ねる西營盤に至る。都心をちょっと離れるだけで、下町深水埗にはビーズやボタン、レースなど服飾品店が集まり、バス40分程度の新界まで足を伸ばせばマングローブ樹が水際に育つ亜熱帯の海が眼前に現れる。
訪問した土地の数を誇る必要はない
こうして同じところに行ったり、連泊したりすると、少しずつ旅先の素顔に近づける。そして、繰り返し訪れる土地に敬意と愛着が生まれることもある。地場の映画や演劇、コンサートにはまったり、現地の言葉を習いたくなる人もいる。多少でもローカルの言葉が話せると旅の過ごし方がもっと自由にもっと楽しくもなる。スペイン語、広東語、タイ語などなど。旅ではスタンプラリーのように訪問した土地の数を誇ることはない。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏3県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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記事提供元:タビリス