10倍堪能！海外旅行の超スキル⑭　お土産は何を誰に　小柳淳

2023/1/12 10:40 ジョルダンニュース編集部

　旅にはお土産がつきもの。記念旅行の想い出、家族や友人へ、職場への義理的お配り。お土産も色々だ。誰と彼とと考えるのは旅の貴重な時間を取られ、うっとおしいとも思う。けれど、お土産をあげたいという人がいる暮らしも素敵ではないか。もちろん、自分用も。

小さな形に残る旅の想い出

マカデミアナッツチョコの不思議

　20世紀の日本経済が元気だったころ、海外旅行に出ると職場や地域のメンバーに配るためたくさん同じものを買う光景が見られた。空港免税店では、ハワイのマカデミアナッツ入りチョコレートの5箱や10箱セットが山積みで売られていた。ハワイもチョコも無関係な土地でもだ。
　そんな空気に抗して、少しでも地域性のあるものを探したりしたが、その方が時間の浪費になった。ただ、街なかの商店をキョロキョロ巡っていると思わぬ良品に出会うこともあり、香港の下町では素朴な玉子の焼き菓子を見つけた。シンガポールのアラブ街青空市でアラビア文字のステッカーを買おうとしたときだ。どうもそれは聖句が書かれているらしく、「これを床に置いて踏まないように」と念を押されて売ってもらい、商売を超える信仰を感じた。その後もちろん床に置いたりしていない。

観光大国の証し、目抜き通りに「Souvenir」

　ハワイや香港、韓国などでは、空港だけでなく街なかに免税店があって、高級品から酒類、雑貨などお土産が揃っている。効率的だと割切れば便利だ。そうでなくお土産探しをする場合は、お菓子屋、雑貨店、衣料品店などを巡る。ここで意外に便利なのがスーパーマーケットだ。インスタント食品やお菓子、調味料、チーズナイフなど地元の生活に根付いているもの、パッケージが独特なものが買えるし、値が張るものは少ない。ただ、ほとんどの肉類や植物は日本入国検疫で持込不可になるので気をつけたい。また、歴史ある街では文具店がいい。地元の人向けの、ペンケース、カード類、封筒など日用品に良いものが見つかる。
　あるとき、ヨーロッパの大都市にはお土産専門店がたくさんあることに気づいた。ベルリンでも、ロンドンでも目抜き通りにある。日本でいえば東京の銀座や新宿、大阪難波や心斎橋のような繁華街にだ。それも、専ら旅行者を相手にする店なのだ。看板にも「Souvenir」と書いてある。たとえばパリなら大小のエッフェル塔、小皿や小銭入れ、マグネットも多種多様。そしてＴシャツ。地元で暮らす人には無用なものばかりだし、俗っぽいといえばそうだが、そういう店があちこちにたくさんある。こういうお土産専門店は日本だと地方の観光地や京都・奈良に多少あるくらいだろう。さすが成熟した観光大国は違うなあと感心したものだ。

ヨーロッパ大都市には土産物専門店がたくさん　左上から時計回り：マドリード、ストックホルム、プラハ、ベルリン

自分のお土産を買うか買わぬか

　ところで、お土産らしいお土産にどことなく漂う俗っぽさが嫌だった。もしかするとどこか余所の途上国で作られているものを買ってどうするのだとも感じていた。でも、あるときから俗っぽくてもお土産らしいものが自分用に欲しくなった。名所ミニチュアや偉人像を表わす小さな品物は良い想い出になる。そういえば小さな子供のころ、祖父からもらった江の島かどこかの貝細工を長い間大事にしていた。いまでは、ヘルシンキのムーミンパパ、スイスのカウベル、ハワイのカメハメハ大王、ローマのコロッセウムなどが家に並んでいて旅を想い起こさせてくれる。
　ベルリンのお土産専門では、1989年に崩壊した東西ドイツを隔てていたベルリンの壁の欠片を売っていた。小さなコンクリート片にペンキ痕が付いていた。果たして20年以上経ってそんなものがあるのだろうか。お店の人に「これホンモノ？」と聞いたら、彼女は「まあね」のように言ってウインクした。これは真に壁の一部かどうかはどうでもいいのだ。ベルリンに行ってその小片を買い、ときどき眺めて旅を想う。旅は俗な物ともよく似合う。