10倍堪能！海外旅行の超スキル⑯　旅のトイレは一大事　小柳淳

2023/2/9 16:52 ジョルダンニュース編集部

　生活に必須のトイレは土地の習慣や文化と深く結びついている。英国人旅行者が日本のトイレを「近未来と感じられるものから、きわめて素朴で原始的なものまである」と何かに書いていたが、旅人はトイレ事情からも旅先の国情を知ることもできてしまう。

パリ、香港、中国……お国柄を映す

　毎日ホテルを出る前にトイレを済ます。これが大原則だが、街なかでトイレに行きたくなることだっていくらでもある。そのときは公衆トイレを探す。その形態や使用方法はお国柄が出ていて興味深い。パリのそれは、多くは歩道上に建つ楕円形の筒状だ。緩くカーブしたドアを開けると、窓は一切なく閉所恐怖症の人はイヤかもしれない。中は床が濡れている。何故かというと、使用後は人が出てドアが閉まると内部を自動で水洗いするのだ。食器洗浄機のようにだ。そのため、前の人が出てきたときに空いたドアのまま入ってしまうと、ドアが閉まったあと大変なことになる。

パリの「密閉式水洗」トイレ　表示はフランス語しかない

　　高層ビルが林立する香港では巨大ショッピングモールが多数ある。これならトイレは簡単に見つかると思いきや、その位置は売り場から離れたバックスペースのようなところに押しやられていて、何かいけないところに行くような気がしてくる。中国ではトイレットペーパーを流さずゴミ箱に捨てることが多い。個室内に大きめのゴミ箱があったらそのルールのトイレだ。マレーシアやインドネシアではトイレ内にホースに付いたシャワーがある。どうも使用後お尻を水洗いするらしく、トイレットペーパーがない場合もある。宗教上の理由らしいのだが、上手く使えばウォッシュレットになる。

小銭ではなくクレジットカードで

　公衆トイレでも有料は多い。イタリアのベネチアでのこと。大運河のアカデミア橋のたもとにトイレがあった。さあ使おうとしても入れない。表示には19:00までとあり、まだ10分ほど余裕があった。が、閉まっている。どうも係員が勝手に切上げ閉所しているみたいだ。「お～い」と声をかけてもダメ。そばにいた地元の人はそんな適当さをよく知っているようで、「カフェに行きなよ」と言っている。カフェではトイレ使用料と同じくらいでコーヒーを飲んでトイレに入った。規則と実情は適当にズレている。
　コインがあっても入れない有料トイレに出くわしたのがベルゲン駅。ノルウェー第二の都市である。駅を見物してトイレに向かうと、やはり有料。しかしコインの投入口がない。なんとクレジットカードオンリーなのだ。ビザとマスターに加えダイナースまで使える。アプリがあるとスマートフォンでもOKのようだがその説明はノルウェー語なので解らない。初めてカードでトイレを使った。

クレジットカードオンリーの駅トイレ　ノルウェーベルゲン

使い方様々、郷に入らば郷に従え

　洋式トイレにはいつも便座がある、と思ってはいけない。「ない」こともあるのだ。盗難や設備不良ではなく、フタも便座もない。便器本体のやや細いフチだけなのだ。これはどうも便器の縁に乗っかるか足を踏ん張って和式風に使うようだ。これは世界のあちこちで目撃情報がある。また、便座にビニールが巻いてあるものをパリで見た。1回使用するたびにビニールが便座に沿って片方の根本に吸い込まれてゆく。はい、これでいつも清潔ですということのようだ。ドイツビュルツブルク駅のトイレは便座が卵型ではなくほぼ円形。そして、使用後は奥の方（背中側）から腕のようなものが出てきて、便座をクルリと一周させて拭いているではないか、不思議なハイテクトイレだった。このときはあまりのおかしさに動画を撮ってしまった。