10倍堪能!海外旅行の超スキル⑰ 改札口が、ある、ない! 小柳淳
2023/2/27 16:48 ジョルダンニュース編集部
「海外では駅に改札などがなくて・・・」と事情通の語りを聞くことがある。これは半分正しく半分間違いだ。うっかり信じてしまうと、旅先で想定外の事態に直面しちょっとうろたえるかもしれない。
確かにヨーロッパをはじめ海外の大都市の駅に行くと、何本ものホームを覆う大きな屋根があって、外から自由に入れることが多い。旅の想い出に長距離列車の発着する雰囲気を感じたり、写真を撮ったりしてしばし旅情に浸れる。改札がなくても、キップのチェックは列車内で検札があるのだ。無札で乗っているのが見つかると、結構厳しくペナルティを受けるという。
でも、近距離の電車に乗って数駅先で降りるなら無札でも見つかりにくいのでは、と思う人もいるだろう。実は、それこそが日本ならではの感覚なのだ。同じ駅に長距離特急列車と近距離電車が出入りしたり、地下鉄が乗り入れてきたりすることもある日本はかなり例外的だ。JR京都駅改札内で福井や金沢への特急に乗れるし、隣の山科までの電車も発着する。東京の中野駅には中央線も地下鉄東西線も走ってくる。これは世界的には珍しい方なのだ。長距離列車と市内の地下鉄はかなりはっきり分かれていて、別物ということの方が多い。
この辺りの情報を知らずに駅に行くと結構面食らう。駅には改札が無いと思って地下鉄に乗ろうとすると、むしろ日本よりはるかに厳しい扉付自動改札が待っている。バーが回転するもの、大人の背丈ほど高い扉を備えたものもある。日本の自動改札のように利用者が転ばぬように、ぶつかって開いてしまうものはない。ただ、面白いのは出口だ。押せば開くだけの扉が多い。入るときにキチンと運賃を払えば出るときはご自由にという感じ。もちろん逆流して出口から入るのは難しい。
例外はドイツ。入口出口とも何もないのだ。鉄パイプの柵のような通路がある程度で、出入り自由なところが多い。ただ、だからといってキップも何も持たずに入らない方がいい。検札で見つかると規則が厳格に適用される。
もちろん地域によって制度は多様で、ドイツではSバーンといって日本の近郊電車に近いものがあって、国鉄の長距離列車と同じ線路か並んでを走る。こういう中間形態があるときは改札の有無は一律には分からない。
長距離列車に乗るときはキップは大切にしまっておいて乗車して指定の席に着けばいい。これがかつての常識だった。ところが最近は一部の国で改札口が新設されてきている。フランスは新幹線TGVが多方面に運転されているが、日本風の自動改札が増えてきている。特急券やスマートフォンをタッチして入場する。「えっどうしたら入れるのだ!?」と不安になったが、なんと日本で発券されたチケットにもバーコードが印字されていて、それを当ててみたら読み取られた。
また、おおらかそうなイタリアでも自動改札に出くわした。地元で聞いたら、難民が増えたりして用もない人が駅構内に入るのを防ぐためとのこと。事の真偽は分からないが、自由にホームに入れなかった。スペインや中国では駅入口かホームへ入るところにX線荷物検査用機器がある。大きな荷物はそれを通さなければ入れない。まあ、その運用はそれぞれのお国柄で、なんとなくパスできてしまうこともあるにはあるが、旅行者はあらぬトラブルにならぬよう規則に従っておいた方がいい。なお、中国では地下鉄改札付近にもX線検査機があるケースもある。
外国の事柄は国や地域によって多彩で一様ではない。そして次々変化している。多少の驚きは旅の楽しみと考えて対処したい。列車、それも長距離列車に乗るときは、少し時間と気持ちの余裕をもって駅に行こう。日本のように新幹線が数分毎に発着し、テキパキと機能的に運営されているとは限らないのだ。ギリギリで列車に滑り込むなどということはくれぐれもないように。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏2県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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無札乗車の発覚には厳しいペナルティ
確かにヨーロッパをはじめ海外の大都市の駅に行くと、何本ものホームを覆う大きな屋根があって、外から自由に入れることが多い。旅の想い出に長距離列車の発着する雰囲気を感じたり、写真を撮ったりしてしばし旅情に浸れる。改札がなくても、キップのチェックは列車内で検札があるのだ。無札で乗っているのが見つかると、結構厳しくペナルティを受けるという。
でも、近距離の電車に乗って数駅先で降りるなら無札でも見つかりにくいのでは、と思う人もいるだろう。実は、それこそが日本ならではの感覚なのだ。同じ駅に長距離特急列車と近距離電車が出入りしたり、地下鉄が乗り入れてきたりすることもある日本はかなり例外的だ。JR京都駅改札内で福井や金沢への特急に乗れるし、隣の山科までの電車も発着する。東京の中野駅には中央線も地下鉄東西線も走ってくる。これは世界的には珍しい方なのだ。長距離列車と市内の地下鉄はかなりはっきり分かれていて、別物ということの方が多い。
入りは厳格、出るのはたやすい
この辺りの情報を知らずに駅に行くと結構面食らう。駅には改札が無いと思って地下鉄に乗ろうとすると、むしろ日本よりはるかに厳しい扉付自動改札が待っている。バーが回転するもの、大人の背丈ほど高い扉を備えたものもある。日本の自動改札のように利用者が転ばぬように、ぶつかって開いてしまうものはない。ただ、面白いのは出口だ。押せば開くだけの扉が多い。入るときにキチンと運賃を払えば出るときはご自由にという感じ。もちろん逆流して出口から入るのは難しい。
例外はドイツ。入口出口とも何もないのだ。鉄パイプの柵のような通路がある程度で、出入り自由なところが多い。ただ、だからといってキップも何も持たずに入らない方がいい。検札で見つかると規則が厳格に適用される。
もちろん地域によって制度は多様で、ドイツではSバーンといって日本の近郊電車に近いものがあって、国鉄の長距離列車と同じ線路か並んでを走る。こういう中間形態があるときは改札の有無は一律には分からない。
かつての常識が覆り、なかった改札があった
長距離列車に乗るときはキップは大切にしまっておいて乗車して指定の席に着けばいい。これがかつての常識だった。ところが最近は一部の国で改札口が新設されてきている。フランスは新幹線TGVが多方面に運転されているが、日本風の自動改札が増えてきている。特急券やスマートフォンをタッチして入場する。「えっどうしたら入れるのだ!?」と不安になったが、なんと日本で発券されたチケットにもバーコードが印字されていて、それを当ててみたら読み取られた。
また、おおらかそうなイタリアでも自動改札に出くわした。地元で聞いたら、難民が増えたりして用もない人が駅構内に入るのを防ぐためとのこと。事の真偽は分からないが、自由にホームに入れなかった。スペインや中国では駅入口かホームへ入るところにX線荷物検査用機器がある。大きな荷物はそれを通さなければ入れない。まあ、その運用はそれぞれのお国柄で、なんとなくパスできてしまうこともあるにはあるが、旅行者はあらぬトラブルにならぬよう規則に従っておいた方がいい。なお、中国では地下鉄改札付近にもX線検査機があるケースもある。
外国の事柄は国や地域によって多彩で一様ではない。そして次々変化している。多少の驚きは旅の楽しみと考えて対処したい。列車、それも長距離列車に乗るときは、少し時間と気持ちの余裕をもって駅に行こう。日本のように新幹線が数分毎に発着し、テキパキと機能的に運営されているとは限らないのだ。ギリギリで列車に滑り込むなどということはくれぐれもないように。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏2県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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記事提供元:タビリス