10倍堪能!海外旅行の超スキル⑳ 現地の言葉は、いったいどれ? 小柳淳
2023/4/14 11:35 ジョルダンニュース編集部
いまや世界的に有名な政治家、ウクライナのゼレンスキー大統領。大統領の母語はウクライナ語ではなくロシア語。えっ、と思うが大統領出身地の東部地方では、ロシア語が母語のウクライナ人もある程度いるという。周知のとおり、ゼレンスキー大統領は公的な場ではウクライナ語を使っている。このように、国の境界線と言葉の使用範囲が一致しないことは世界的には普通のことだ。日本なら日本語、韓国なら韓国語、というように簡単に済まない地域がたくさんある。というより、日本や韓国がかなり特殊な少数派なのだ。
外国を旅するとき、現地の言葉ができたら楽しさが増す。市場や屋台などでは英語よりウケがいいだろうし、その方が安くなることだってある。とはいえ、世界中には数えられないほどの言葉が話されている。一説には7,000を超えるともいう。国の数より遥かに多い。「ひとつの言語」とカウントする基準によっても種類の数は上下する。話者数が5000万人を超える言語だけでも20以上だ。だから旅行のたびに現地の言葉を学ぶというのは、志としては立派だが現実的ではない。そこで、現地の言葉はごく少数の旅行に必要な語句を覚えることでしのぎ、他は英語や会話帳、自動翻訳機で、となる。このあたりは連載第12回の「旅の言葉は何を覚えるか」で書いたので、そちらも読んでみてほしい。
「ありがとう」「いくら?」などの必要最小限語句を覚える前に、何語でそれらを覚えるかを考えなくてはならない。冒頭に書いたように国と使用言語は一致していない方が普通なのだ。
スイスへの旅行を計画して、スイスの言葉を少し覚えておこうとするとき、それは何語になるのか。スイス語という言語は存在しない。スイスには公用語が4つあるのだ。それは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語だ。地域によって人々が使う言葉が違う。一番多いのはドイツ語だが、西のジュネーブ周辺はフランス語圏、東南のリゾート地として名高いサン・モリッツではロマンシュ語とドイツ語が話されている。このような国・地域はいくらでもある。アフリカ大陸の国境は帝国主義ヨーロッパが植民地にしたときのものばかりなので、国と民族・言語は一致しない方が普通だ。このように国や地域によって話されている地元の言葉は何か、ということを分からないと覚えようがないのだ。
ああ、ややこしくて分からない、というのが正直なところだ。現地の言葉と思って話しかけると目の前にいる人にとって全然自分の言葉でない、もしかすると敵対関係にある民族の言葉だったりする可能性だってある。相手に敬意を表したつもりが仇となるかもしれない。よく分からないときは地元の言葉にこだわらずに、英語やフランス語などの外国語だけれど通用度の高い言葉にしよう。現地に住むのではない旅人としては、相手に失礼にならず、意思が通じればいい。日本に来る旅行者が言う「Thank you」や「Merci」「謝謝」などはたいてい我々も理解できるのと同じように、感謝の言葉は英語などでもまあ通じる。まずはお互いに、仲良くしましょうと敬意を持っていることが伝わればいい。
さて、旅先の言葉は何か。これには一律の答えはない。せっかく旅するのだから、ネット検索してチャッチャッと数秒で答えを求めず、旅先のことを書いた紀行や人文系の本を1冊読んで、多少の歴史文化的背景を知ってから旅立つことをお勧めしたい。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏2県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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旅のたびに言葉を学ぶのは現実的ではない
外国を旅するとき、現地の言葉ができたら楽しさが増す。市場や屋台などでは英語よりウケがいいだろうし、その方が安くなることだってある。とはいえ、世界中には数えられないほどの言葉が話されている。一説には7,000を超えるともいう。国の数より遥かに多い。「ひとつの言語」とカウントする基準によっても種類の数は上下する。話者数が5000万人を超える言語だけでも20以上だ。だから旅行のたびに現地の言葉を学ぶというのは、志としては立派だが現実的ではない。そこで、現地の言葉はごく少数の旅行に必要な語句を覚えることでしのぎ、他は英語や会話帳、自動翻訳機で、となる。このあたりは連載第12回の「旅の言葉は何を覚えるか」で書いたので、そちらも読んでみてほしい。
国と民族・言語は一致しない方が普通
「ありがとう」「いくら?」などの必要最小限語句を覚える前に、何語でそれらを覚えるかを考えなくてはならない。冒頭に書いたように国と使用言語は一致していない方が普通なのだ。
スイスへの旅行を計画して、スイスの言葉を少し覚えておこうとするとき、それは何語になるのか。スイス語という言語は存在しない。スイスには公用語が4つあるのだ。それは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語だ。地域によって人々が使う言葉が違う。一番多いのはドイツ語だが、西のジュネーブ周辺はフランス語圏、東南のリゾート地として名高いサン・モリッツではロマンシュ語とドイツ語が話されている。このような国・地域はいくらでもある。アフリカ大陸の国境は帝国主義ヨーロッパが植民地にしたときのものばかりなので、国と民族・言語は一致しない方が普通だ。このように国や地域によって話されている地元の言葉は何か、ということを分からないと覚えようがないのだ。
失礼にならず、意思が通じることが大切
ああ、ややこしくて分からない、というのが正直なところだ。現地の言葉と思って話しかけると目の前にいる人にとって全然自分の言葉でない、もしかすると敵対関係にある民族の言葉だったりする可能性だってある。相手に敬意を表したつもりが仇となるかもしれない。よく分からないときは地元の言葉にこだわらずに、英語やフランス語などの外国語だけれど通用度の高い言葉にしよう。現地に住むのではない旅人としては、相手に失礼にならず、意思が通じればいい。日本に来る旅行者が言う「Thank you」や「Merci」「謝謝」などはたいてい我々も理解できるのと同じように、感謝の言葉は英語などでもまあ通じる。まずはお互いに、仲良くしましょうと敬意を持っていることが伝わればいい。
さて、旅先の言葉は何か。これには一律の答えはない。せっかく旅するのだから、ネット検索してチャッチャッと数秒で答えを求めず、旅先のことを書いた紀行や人文系の本を1冊読んで、多少の歴史文化的背景を知ってから旅立つことをお勧めしたい。
(写真:小柳淳)
小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏2県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。
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記事提供元:タビリス