10倍堪能！海外旅行の超スキル㉒　もう一つの旅の楽しみ食堂車　小柳淳

2023/5/15 11:10 ジョルダンニュース編集部

　海外に旅行するのだからしっかり楽しみたい。そのために時間を有効に使いたい。移動時間は車窓を眺めながらゆっくりできるよい機会だ。ここに別の楽しみを重ねると効率的だし、旅の良さが増す。それは食堂車を利用すること。

充実したヨーロッパの列車の食事

　もう日本では定期列車から食堂車そのものがほとんどなくなり、お弁当が主流になってしまったので、つい列車で食事という気分を忘れがち。でも、外国、特にヨーロッパでは多種多様な食堂車があって、このあたりは経済的効率だけでなく旅を楽しむ観点が抜けていなくて素敵だ。テーブルについて食事をするタイプ、立食でのビュッフェ、座席でそのまま食事ができる進化した車内販売タイプなどそのスタイルは色々だ。

スイスの食堂車「Bistro」と朝食

　ドイツやイタリアの新幹線クラスのスピードで走る特急にはほぼ食堂車が付いていて、テーブルについて流れゆく車窓風景を楽しみながら食事ができる。ポルトガルでは一番速い特急アルファ・ペンドゥラール（AP）は一等車で座席に食事を持ってきてくれるサービスがあり、その次に速いインテルシダーデ（IC）にはビュッフェが連結されている。オーストリアやチェコを走るレイルジェットは食堂車があり、一等車では自分の座席での注文もできる。ノルウェーのブッフェではワインなどはテイクアウトできず、ビュッフェ内でしか飲めない。北欧は飲酒に対して厳しい規制が多い。

旅行会社の手配でゆっくり食事を堪能

　北東から南西に長い日本と違い、ヨーロッパ大陸は東西南北に広がっている。そのため、鉄道路線が網のように広がり、特急の乗継が必要なことが多い。ドイツバイエルン州のビュルツブルクからベルリンに行くときに昼食を食堂車にしようと決めた。特急ICEで4時間はかかるのだ。しかしこの区間には直通列車が無い。ビュルツブルクからは北部のハンブルク方面ばかりでベルリンへは乗換が必要だった。西のフランクフルト方面からの列車がベルリンに向かう。この2系統は途中FludaとGöttingenの間は同じ線路を走る。その間は約1時間だ。Fuldaまでは約30分。食事をゆっくりするには、Göttingenではなく手前のFuldaで乗換えて後半の列車に時間を充てたい。

ドイツ鉄道ICEは本格的食事ができる

　ところが、ドイツ鉄道やRAILEUROPAのWEBサイトでは乗換駅がGöttingenしか選べない。これには困り、旅行会社の窓口に手配を依頼した。そこはさすがで、ちゃんとFluda乗換のチケットを入手することができた。いくらWEBが便利に見えようと、プロの技はその上をいく。多少の手配手数料にはその価値がある。おかげで、後半の2時間半でゆっくり食事ができた。

イタリア、中国、お国柄も色々

　イタリアの特急食堂車でのこと。メニューがイタリア語主体だったので、悪戦苦闘して解読したが、ウエイターがとても明るい男性で丁々発止やりとりして料理を決定。これも時間はかかるが楽しいひとときだ、ワインは小瓶。赤ワインのひとつを選ぶと「それはいい！」とこれまたご機嫌。ローマからトスカーナ地方を北上しながらの食堂車は列車の旅に色どりが添えられた。ところがさあ会計となって、くだんのウエイター氏が言う。「君たちは何を食べたんだっけ？」おお、自己申告での会計とあいなった。おおらかといえばおおらかなイタリア。