10倍堪能！海外旅行の超スキル㉘　ヨーロッパの特急に自由席車がない！　小柳淳

2023/8/23 9:11 ジョルダンニュース編集部

　ヨーロッパは昔も今も国際列車をはじめ鉄道網が充実している。フランスのTGV、ドイツのICEなど新幹線級の高速列車も多く、車窓を楽しめる列車の旅ができる。新幹線「級」と書いたのは、そのような高速列車もローカル列車も同じ線路を走ることが多いのだ。だから、駅でも区別が無いことがほとんど。ヨーロッパや多くの国ではレール幅がいわゆる標準軌の1,453ミリで、日本の新幹線と同じ。一方、日本の在来線は1,067ミリで狭い。明治維新のときに鉄道を導入した際、欧米による植民地で採用されていた狭軌で線路を敷いたのが始まり。そのため新幹線はまったく別の線路や駅ホームとなる。

ミラノ駅　右の赤い列車が特急フェレッチェロッサ、一般列車と交ざって停車

安心して座りたいから予約は必須

　旅行日数が限られる旅行者にとって駅まで行ったのに満席で乗れないことや、立ってゆくしかないなどという事態は避けたいもの。特に、繁忙期は注意が必要だが、旅行先各国の繁忙期を把握するのは少し難しい。そのため予約をしておくことがお勧めだ。列車予約はインターネットの鉄道・国鉄WEBサイトから可能だが、日本語が使えるものは少ない。英語ページはたいていあるが、不安な人は旅行会社に依頼するのもいい。手数料はかかるが、確実で安心でもある。

日本で予約した特急乗車券　上：ドイツ、下：ポルトガル

神聖ローマ帝国VSラテン式

　指定席がとれなければ自由席でいいのはないか、と考えるのは日本式。TGVは全車指定席だし、スペインのAVE、イタリアのフェレッチェロッサやイタロも全車指定席。だから予約のない人は乗車できない。
　ところが、ドイツやオーストリア、スイスになると事情が変わる。指定席車もないのだ。自由席車、指定席車ともになしとはどういうことかというと、車両ごとにその区分がない。指定席であり自由席なのだ。この場合、キップさえ持っていれば予約なしで特急などに乗れる。あらかじめ席を予約すると、席番号が示されて指定席に座れる。あれ、指定席車はなかったのではと感じるかもしれないが、正確には指定席「車」がないのだ。予約を入れると、その席が指定席になる。たとえばフランクフルトからケルンまで予約があると、その前後は誰が座ってもいいのだ。個々の座席には小さな表示器があって、その席が予約されている場合は予約区間が表示される。予約のない人は表示がない席か表示区間外で座る。なんだか不思議な気もするが、実はこれに似た方式が近年日本でも導入されている。JR東日本の特急あずさや特急ひたちは自由席制度がない。特急券は指定でも無指定でも同料金だ。
　この区分は大雑把に言ってしまうと、ドイツを中心とした中世の神聖ローマ帝国だったエリアは区分なしで、仏伊西などラテン諸国は全車指定席という区分になる。