10倍堪能！海外旅行の超スキル㉙　ホテルを出でよ、定番朝食を離れてみる　小柳淳

2023/9/14 9:24 ジョルダンニュース編集部

スクランブルエッグの思い込み

　あるリゾートホテルの支配人と話していて朝食の話題になった。そのホテルは朝もブッフェではなくて、キチンと和洋の定食を出していた。ところが支配人が嘆くには、スクランブルエッグでお叱りを受けることがあるという。そのホテルではカリカリに焼いた薄いパンに黄色のスクランブルエッグを盛り上げて丸い小ぶりの皿で出している。その宿泊客はスクランブルエッグというものは、大きな皿に平らにふんわりと載せたものと思い込んでいるようなのだ。
　そういえば、月並みだけれどイタリア行ったとき、ピザを食べたくなった。丸く焼いて扇形に切って食べるイメージで、ローマのピザ屋に入った。すると、そこには四角い食べ物が何種類も並んでいたのだ。一瞬ギョッとしたが美味しくいただいた。料理は工業製品ではないので、同じ名前のものでも土地によっても違うし時代により変化もする。自分が覚えた料理を唯一の正解などと決めつけずに、旅先で出会ったものやことを素直に受け入れたい。

ローマで出会った四角いピザ

朝食付きは便利ではあるけれど

　思い込みといえば、香港の朝食は見事に期待を裏切られる。街の食堂「茶餐廳」では昼以降のメニューの多彩さに反して、朝食は４～8種くらいのセットメニューに限られる。そのメニューもスープマカロニやインスタントラーメンにパンとコーヒーを添えた朝定食が主流。朝はサッと済ます方が好まれるのかもしれない。飲茶や広東料理はないの？とも思うが、日本だって毎朝、天ぷらや会席料理を食べてはいない。日本の都市に来た外国からの旅行者はもしかすると、厚いトーストと茹で卵プラスミニサラダにコーヒーのモーニングセットが日本の朝食であって、街の外食には和食がないと感じるかもしれない。
　また、ホテルを予約するときに朝食付きを選ぶことが多いかもしれない。それはたいていブッフェ（バイキング）方式で、卵料理やサラダ、ハムやソーセージなどなじみの食材が並び、場所によっては地元料理が少し加わる。ロンドンやプラハのホテルで朝食ブッフェにスパークリングワインがあった。他のお酒はなかったので、朝食時にスパークリングはありなのかと感心したし、嬉しく一杯いただいた。ホテルのブッフェ朝食は安心だし、すぐに街歩きを始めたい朝に店探し時間を使わずに済む。でも、少し平凡な気もしてくるし、万国共通的朝食では品数の多寡はあるにしても欧米社会のスタンダードでしかない。

ホテルのブッフェ朝食は安心　スパークリングワインがあった

地域の食堂で小さな発見の喜び

　台湾では同行者が街へ出て朝ごはんを食べたいと言い出したのでホテルを出た。町場の食堂に入ると鹹豆漿（シェントウシャン）なる食べ物に出会った。豆乳に揚げパンやネギなどを刻んだ薬味が入っている。しかしそれはスタート時点の姿だった。これに黒酢など加えるというのだ。すると豆乳が徐々に固まりホロホロになってくる。どうも具や味付けは店によって多彩というか色々違いがあるらしい。これも、最初に食べたものだけで決めないで色々試すのもお勧め。